
【クイズ解説㉑】南中がちょうど正午になる日は年に何日? — 均時差のきほんを確認する
年に0日か1日です。
「均時差がゼロになるのは年に4回」——これは正しい。では南中が12時ちょうどになる日も年に4日か、というと違います。0日の年のほうが多いくらいです。時計の正午と本物の正午がどれだけ離れているのかを、4択2問で確かめます。
第1問:東経135度で、太陽の南中時刻は1年でどれくらいふれる?
日本標準時の基準である東経135度の子午線上。太陽が真南に来る時刻は、1年のあいだにどれくらいの幅で動くでしょうか。
- ほとんど動かない(いつも12時ちょうど)
- 約5分
- 約31分
- 約2時間
正解:3(約31分)
なぜそうなるのか
国立天文台暦計算室の暦象年表Web版で、経度135度00分00秒(兵庫県明石市付近)の南中時刻を計算させると、2026年はこうなります。
| 日付 | 南中時刻 | |
|---|---|---|
| いちばん早い日 | 11月3日 | 11:43:33 |
| いちばん遅い日 | 2月10〜11日 | 12:14:10 |
差は 30分37秒。前後の年(2024・2025・2027年)も30分37秒〜30分39秒で、ほぼ一定です。
この幅を作っているのが均時差です。暦計算室の定義では「視太陽時と平均太陽時の差」。本物の太陽で測った時刻と、時計が刻んでいる時刻の差です。地方平均太陽時での南中時刻は 12時 − 均時差 になります。
2026年の均時差の極値は、11月3日に+16分27秒、2月11日に−14分11秒。足すと30分38秒——上の振れ幅そのものです。
原因は2つあって、大きいのは意外なほう
均時差が生まれる理由は2つあります。
- ① 地球の公転軌道が楕円であること:ケプラーの第2法則により、近日点付近で地球は速く動く。その分だけ余計に自転しなければならず、南中の間隔が変わります
- ② 地軸が公転面に対して約23.4度傾いていること:太陽は黄道の上を進みますが、時刻の物差しは赤道の上にあります。傾いているぶん、黄道上を一定速度で進んでも赤道への投影は一定になりません
有名なのは①ですが、暦計算室ははっきりこう書いています。
要因1に比べてわかりづらいとは思いますが、南中時刻に与える影響はむしろこちらの方が勝ります。
大きいのは②、地軸の傾きのほうです。①は1年周期、②は半年周期。この2つを重ねるから、均時差のグラフは山と谷が2つずつある見慣れない形になります。
東京では、南中が12時を過ぎない
もうひとつ、経度の効果があります。東京(東経139度44分)の2026年の南中は 11:24:37〜11:55:15。いちばん遅い日でも11時55分で、1年を通じて12時を過ぎません。
経度差15度が1時間、つまり1度あたり4分。東京は東経135度より約4度44分東にあるので、南中が約19分早くなります。大阪でも名古屋でも仙台でも札幌でも、東経135度より東の都市では同じことが起きます。
「太陽が真南に来たらお昼」という感覚は、東京では最大35分ずれるわけです。
第2問:南中がちょうど12時00分00秒になる日は、年に何日?
東経135度の子午線上で、太陽の南中時刻が秒単位でちょうど12時00分00秒になる日は、1年に何日あるでしょうか。
- 毎日(それが正午の定義だから)
- 年に4日(均時差がゼロになる回数と同じ)
- 年に0日か1日
- 年に13〜14日
正解:3(年に0日か1日)
なぜそうなるのか
暦象年表Web版で東経135度の南中時刻を秒まで出し、12:00:00 になる日を数えるとこうなりました。
| 年 | 12:00:00 の日 |
|---|---|
| 2024 | 1日(4月15日) |
| 2025 | 0日 |
| 2026 | 1日(6月13日) |
| 2027 | 0日 |
半分の年は1日もありません。
均時差がゼロを横切るのは年に4回で、これは正しい。天文学辞典は「4月15日、6月14日、9月1日、および12月25日」ごろとしています。しかしゼロを横切るのは「瞬間」であって、その瞬間がたまたま南中の時刻に重なる日があるとは限りません。
正確な言い方はこうです。南中がちょうど正午になる「瞬間」は年に4回ある。日にちで数えられるものではない。
選択肢のどこが違うか
- 1(毎日):正午の定義は「本物の太陽の南中」ではなく、架空の平均太陽を使った時刻です。日本天文学会は平均太陽を「黄道上を運動する太陽の平均速度と等しい速度で赤道上を運動する仮想の天体」と定義しています。私たちの時計は、実在しない太陽に合わせて動いています
- 2(年に4日):均時差がゼロになる回数(年4回)と、南中が12:00:00になる日数を取り違えています。この記事のいちばんの落とし穴です
- 4(年13〜14日):これは「12時00分台」まで広げた場合の日数です。分単位で丸めれば年13〜14日あり、4月・6月・8〜9月・12月の4つの時期に固まって現れます。秒まで見ると0〜1日
おまけ:日の入りがいちばん早いのは、冬至ではない
均時差のいちばん身近な現れ方がこれです。2026年の明石(標高0m)で計算すると、こうなります。
| 項目 | 日付 | 二至との差 |
|---|---|---|
| 日の出がいちばん早い | 6月13日 | 夏至(6月21日)の8日前 |
| 日の入りがいちばん遅い | 6月29日 | 夏至の8日後 |
| 日の入りがいちばん早い | 12月5日 | 冬至(12月22日)の17日前 |
| 日の出がいちばん遅い | 翌1月7日 | 冬至の16日後 |
昼の長さが最大・最小になるのは夏至と冬至ですが、日の出と日の入りは二至を挟んで前後にずれます。昼の長さは「日の入り − 日の出」なので、両端が同じ向きに動けば長さは変わらない。その「同じ向きの動き」を作っているのが均時差です。
「12月に入ると急に日が短くなるのに、冬至を過ぎてもしばらく朝が暗い」——あの体感の正体です。
そして、東経135度そのものが2種類ある
ここからが測地系の話です。明石市立天文科学館の公式サイトから。
明石市内の多くの子午線標識は、天文測量による東経135度子午線上に建立されています。GPSで表示される東経135度とは120メートルほどのずれがあります。これは間違っているのではなく、天文測量と地図測量の定義の違いによるもので、コダワリのずれです。
天文測量は星を観測して経度を決めます。基準になるのは鉛直線=重力の向き。いっぽうGPSが表示する経度は、地球を近似した回転楕円体の上で定義されています。重力の向きと楕円体の法線は一致せず(この差を鉛直線偏差といいます)、同じ地点でも天文経度と測地経度は一致しません。
時刻を決めるための経度と、地図を描くための経度が、120m離れている。
均時差は「基準の太陽(平均太陽)」と「実物の太陽」の差でした。子午線標識のずれは「基準の鉛直線」と「基準の楕円体」の差です。どちらも、基準を先に決めなければ数字が決まらないという同じ話をしています。

GeoPrism JP の「学ぶ」は、この「基準を決めてから測る」という話を、東京測地系からJGD2024まで順に追える画面です。経度が2種類あることに驚いたら、緯度と高さでも同じことが起きていると考えて、まず間違いありません。
https://apps.apple.com/app/id6780149823
今回のまとめ
- 東経135度の南中は、1年で 11:43:33〜12:14:10(2026年)。振れ幅は約31分
- 原因は①楕円軌道と②地軸の傾き23.4度。効きが大きいのは②
- 南中が秒単位で12:00:00になる日は年に0日か1日。均時差がゼロを横切る「瞬間」が年4回あるだけ
- 経度1度=4分。東京では南中が12時を過ぎることが一度もない(最遅で11:55)
- 日の入りが最も早いのは冬至の17日前、日の出が最も遅いのは冬至の16日後(2026年・明石)
- 明石の子午線標識とGPSの東経135度は約120m離れている。天文経度と測地経度の違い
なお、GeoPrism JP の「学ぶ・クイズ」を解説するこの連載は今回で21回目です。前回は水平線までの距離と、式に入れる高さの取り違えを扱いました。
出典
- 国立天文台暦計算室「暦Wiki/太陽時」 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/C2C0CDDBBBFE.html
- 国立天文台暦計算室「暦Wiki/日の出入りと南中/南中時刻は変化する」 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/C6FCA4CEBDD0C6FEA4EAA4C8C6EEC3E62FC6EEC3E6BBFEB9EFA4CFCAD1B2BDA4B9A4EB.html
- 国立天文台暦計算室「暦象年表 Web版」 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/cande/
- 国立天文台 よくある質問「日の出、日の入りの時刻は毎日どのくらい変化するのですか?」 https://www.nao.ac.jp/faq/a0104.html
- 日本天文学会「天文学辞典」均時差/平均太陽 https://astro-dic.jp/equation-of-time/
- 明石市立天文科学館「明石と子午線」 https://www.am12.jp/akashi-shigosen/
均時差の値・南中時刻・日の出入りの日付は、国立天文台暦計算室「暦象年表 Web版」に計算させた値です(標高0m・大気差考慮)。年によって1日程度前後します。記述は2026年9月時点のものです。
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- 書籍でまとめて学ぶ: 『日本の測地系Q&A』第1章「緯度と経度のきほん」(Kindle Unlimited対応)
入門から通しで読むなら: 『日本の測地系がわかる本』 — 旧日本測地系から JGD2024 まで、座標がズレる理由と実務での扱いを1冊にまとめました(Kindle Unlimited 対応)
開発者より: アプリ・Kindle本・オープンソースの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。
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