【クイズ解説㉔】地球が1回転する時間は24時間ではない? — 恒星日と太陽日のきほんを確認する

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【クイズ解説㉔】地球が1回転する時間は24時間ではない? — 恒星日と太陽日のきほんを確認する

【クイズ解説㉔】地球が1回転する時間は24時間ではない? — 恒星日と太陽日のきほんを確認する

24時間ではありません。

地球が360度まわるのにかかる時間は、約23時間56分4秒。24時間より約4分短いのです。では残りの4分は何をしている時間なのか。そして——「1回転=恒星日」という説明自体が、実は厳密には正しくありません。2問で確認します。


第1問:地球が360度まわるのにかかる時間は?

私たちの1日は24時間です。では、地球が自転で360度まわりきるのにかかる時間はどれでしょう。

  1. 24時間ちょうど。だから1日は24時間
  2. 約23時間56分。24時間より短い
  3. 約24時間4分。24時間より長い
  4. 季節によって23時間56分から24時間4分の間で変わる

正解:2(約23時間56分。24時間より短い)

なぜそうなるのか

地球は自転しながら、同時に太陽のまわりを公転しています。

1年(約365日)で公転軌道を360度まわるので、1日あたりおよそ1度進みます。地球が360度きっちり自転し終わったとき、地球は公転で1度ぶん横へ動いてしまっている。太陽の方向は、その1度ぶんずれています。

だからもう一度太陽が真南に来る(南中する)には、360度+約1度まわらなければなりません。この「余分な1度」を回るのにかかる時間が、約4分です。

一方、恒星ははるかに遠くにあります。地球が公転で1億5千万km動いたところで、恒星の見える方向はまったく変わりません。だから恒星に対しては360度で足ります。

長さ 何から次の何まで
1太陽 24時間(平均) 太陽の南中 → 次の南中
1恒星 23時間56分4.0905秒 春分点の南中 → 次の南中
3分56秒 公転による約1度ぶん

私たちの「24時間」は、太陽という1つの天体を基準に選んだ結果です。星を基準にすると、1日は約4分短くなります。

数字で確かめる

1太陽年(365.2422日)のあいだに、この「余分な1度」がちょうど360度ぶん積み上がります。つまり、

365.2422 太陽日 = 365.2422 + 1 = 366.2422 恒星日

ここから1恒星日を出すと、

  • 365.2422 ÷ 366.2422 = 0.9972696 日
  • 0.9972696 × 86,400秒 = 約86,164秒 = 23時間56分4秒

逆に割れば、恒星時は世界時の 1.0027379倍の速さで進みます。1日あたり 86,400 × 0.0027379 ≒ 236秒(約3分56秒)

選択肢4について

「季節で変わる」のは太陽日のほうです。地球の公転軌道が楕円で、しかも自転軸が傾いているため、太陽の南中から次の南中までの長さは1年を通じて一定ではありません。だから私たちは平均した24時間を時計に使っています。その平均と実際の太陽のずれが均時差で、最大で約16分にもなります。

恒星日のほうは、こうした季節変化をほとんど受けません。


第2問:恒星日は、厳密には何を基準に定義されている?

「恒星日=地球が1回自転する時間」と説明されることがよくあります。しかし国立天文台暦計算室は、もう一段ていねいな定義を示しています。恒星日の基準はどれでしょう。

  1. ある特定の明るい恒星(たとえばシリウス)の南中
  2. 春分点の南中
  3. 地球の自転軸の1回転そのもの(天体を使わない)
  4. 太陽系の重心に対する地球の回転

正解:2(春分点の南中)

なぜそうなるのか

暦計算室の定義はこうです。

グリニジ0hに春分点が子午線に南中し、それから1恒星日=24恒星時間後に再び南中する
(国立天文台暦計算室「恒星時について」)

特定の星ではなく、春分点を使います。理由は、地球の自転軸が歳差・章動によって絶えず動いているからです。軸が動くと、ある恒星に対して360度まわっても、別の恒星に対しては360度になっていない——そういう状況が起こり得ます。だから基準を1つに決めておく必要がある。

その結果、恒星日は純粋な自転周期そのものではありません。歳差と章動の影響を含んだ量です。「地球が1回転する時間」という言い方は、便宜的な説明ということになります。

さらにもう一段あります。春分点には平均春分点真春分点の2種類があり、対応して平均恒星時真恒星時が分かれます。その差は分点差と呼ばれ、章動の大きさを表しています。

測地系とまったく同じ構造

ここが、このクイズをGeoPrism JPで扱う理由です。

  • 緯度・経度は「地球の形そのもの」ではなく、楕円体と原点をどう置くかという取り決めの上にある
  • 恒星日は「自転そのもの」ではなく、春分点をどう定義するかという取り決めの上にある

どちらも、基準の置き方を決めないと値が決まらない元期と今期を分けて考えるのも、楕円体の違いで座標が変わるのも、同じ発想です。

元期から今期への座標の移動を地図とピンで図解した学習図

選択肢1について

特定の恒星を使うと、歳差・章動のせいで「どの星を選ぶか」で値が変わってしまいます。実際、日本天文学会の天文学辞典でも恒星日は春分点を基準に説明されています。


おまけ:衛星の軌道は、どちらの「1日」に合わせてある?

答えは恒星日の側です。

内閣府のみちびき公式解説によれば、静止軌道(GEO)は赤道上空3万6000kmを、ちょうど1日で周回する軌道です。地球から見て衛星がいつも空の同じ場所にいるので、放送や通信に使われます。気象衛星ひまわりもこの軌道です。

ここでいう「ちょうど1日」は、太陽ではなく地球の回転に合わせた1日です。太陽日(24時間)に合わせてしまうと、1日あたり約4分ぶん地球のほうが先に回ってしまい、衛星は空を東西にずるずる流れていきます。空の同じ場所に留まるには、地球の自転そのものに同期させなければなりません。

みちびきの準天頂軌道は、その静止軌道を変形したものです。

静止衛星の軌道面を傾けた(inclined)もので、この軌道をとる衛星の直下点は、赤道を境に南北に均等に8の字を描きます
(内閣府「測位衛星の3種類の軌道」)

さらに北半球では地球から遠ざけて速度を落とし、南半球では近づけて速度を上げる。こうして8の字を南北非対称にすることで、北半球に約13時間、南半球に約11時間留まります。日本の真上に長くいられるのは、この設計のおかげです。

軌道 高度 周期 使っている衛星
MEO(中高度軌道) 2万200km 12時間 GPS
GEO(静止軌道) 3万6000km 1日 ひまわり、みちびきの静止衛星
IGSO・準天頂軌道 対地同期 みちびきの準天頂軌道衛星

内閣府の公式解説はGPSの周期を「12時間」と丸めた値で示しています。本記事はその公式値をそのまま使っています。

「1日」という、いちばん素朴に見える単位にも基準系がある。それが軌道設計にまで効いてくる、という話でした。

出典

  • 日本天文学会「天文学辞典」恒星日 https://astro-dic.jp/sidereal-day/
  • 国立天文台暦計算室「恒星時について」(暦ウィキ/トピックス) https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/topics/html/topics2015.html
  • 内閣府「みちびきの軌道」 https://qzss.go.jp/overview/services/tech01_orbit.html
  • 内閣府「[衛星測位入門] 測位衛星の3種類の軌道」 https://qzss.go.jp/overview/column/orbit_151027.html

0.9972696日・約86,164秒・1.0027379倍・約3分56秒は、暦計算室が示す 365.2422 と 366.2422 の関係から本記事内で計算した値です。衛星の軌道諸元は内閣府の公式解説に記載された値をそのまま用いています。記述は2026年9月時点のものです。


GeoPrism JPのホーム画面。可視化・学習・連携のメニューが並んでいる

基準の取り方で値が変わる——同じことを緯度経度の側で確かめられるアプリを作っています。

GeoPrism JP(測地系のズレを見て・学べるiOSアプリ)
https://apps.apple.com/app/id6780149823


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