1恒星日は何時間? — 23時間56分4秒が決まる理由と、星の南中が毎日4分ずつ早くなる仕組み

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1恒星日は何時間? — 23時間56分4秒が決まる理由と、星の南中が毎日4分ずつ早くなる仕組み

1恒星日は何時間? — 23時間56分4秒が決まる理由と、星の南中が毎日4分ずつ早くなる仕組み

23時間56分4秒です。

去年の夏に見上げた星座が、今年は同じ時刻に少しずれた場所にある。同じ空なのに、なぜ位置が変わるのでしょうか。

答えは1日の長さが2種類あるからです。太陽を基準にすれば24時間ですが、星を基準にすると1恒星日=23時間56分4.0905秒。約4分短い。ただし——この4分は「地球が1回転する時間」そのものではありません。


なぜ4分足りないのか

地球は自転しながら、同時に太陽のまわりを公転しています。

1年で360度まわるので、1日あたりおよそ1度。地球が360度きっちり自転し終えたとき、太陽の方向はその1度ぶんずれています。もう一度太陽が真南に来る(南中する)には、360度+約1度まわらなければなりません。

一方、恒星ははるかに遠くにあります。地球が公転で少しくらい動いても、方向はまったく変わりません。だから恒星に対しては360度まわれば足りる。

この「余分な1度」が、太陽日と恒星日の差です。

  • 1太陽日:太陽が南中してから、次に南中するまで=24時間(平均)
  • 1恒星日:星が南中してから、次に南中するまで=23時間56分4.0905秒

数字で確かめる

国立天文台暦計算室の示す関係は、とてもきれいです。

1太陽年のあいだに、余分な1度が積み重なってちょうど360度に達します。つまり365.2422太陽日 = 365.2422 + 1 恒星日

ここから1恒星日を出すと——

  • 1恒星日 = 365.2422 ÷ 366.2422 日 ≒ 0.9972696日
  • 0.9972696 × 86400秒 ≒ 86164.1秒 = 23時間56分4.1秒

逆向きに割ると、

  • 1日 = 366.2422 ÷ 365.2422 ≒ 1.0027379恒星日

恒星時は、私たちの時計より1.0027379倍速く進みます。 1日あたりの差は86400 × 0.0027379 ≒ 236.6秒、およそ3分57秒。これが「毎日4分ずつ早くなる」の中身です。

長さ 何を基準にしているか
1太陽日 24時間 太陽の南中
1恒星日 23時間56分4.0905秒 春分点の南中
約3分56秒 公転による約1度ぶん

1年で見ると、この4分が365回積み上がって24時間になります。だから、同じ星座は1年後の同じ日時にまた同じ位置へ戻ってきます。 季節と星座が結びついているのは、この帳尻が合うからです。


ここが本題——恒星日は「自転」ではなく「春分点」で定義されている

「恒星日=地球が1回自転する時間」と説明されることが多いのですが、厳密にはそうではありません。

国立天文台暦計算室は、その理由を明快に書いています。地球の自転軸は歳差・章動によって絶えず動いており、ある恒星に対して360度まわっても、別の恒星に対しては360度になっていない——そういう状況が起こり得る。だから恒星日は特定の星ではなく、春分点を使って定義されます。

グリニジ0hに春分点が子午線に南中し、それから1恒星日=24恒星時間後に再び南中する
(国立天文台暦計算室「恒星時について」)

この定義には、もうひとつ段があります。春分点そのものに平均春分点と真春分点の2種類があり、対応して平均恒星時と真恒星時が分かれます。その差は分点差と呼ばれ、章動の大きさを表しています。

つまり、恒星日は地球の自転に「似た」概念ではあるものの、歳差と章動の影響を含んだ量です。純粋な自転周期そのものではありません。

これは測地系の話と同じ構造をしています。 緯度・経度も「地球の形そのもの」ではなく、楕円体と原点をどう置くかという取り決めの上にあります。時間の側でも、基準にどこを選ぶかで値が変わる。基準点の位置を測るときの元期と今期を分けて考えるのと、まったく同じ発想です。


恒星時が、経度と天球を結ぶ

地球儀とグリッドで地球に固定した基準系を表した学習図

恒星日が実用的なのは、地上の座標と天球の座標を結びつけるからです。

天体が空のどこに見えるかは、時角 H という量で決まります。暦計算室の式では、

H = θ + λ − α

  • θ:グリニジ恒星時
  • λ:観測地の経度
  • α:天体の赤経(天球側の座標)

H が 0 になったとき、その天体は子午線上にある——つまり南中しています。

この式に経度がそのまま入っていることに注目してください。 天体がいつ南中するかは、観測者の経度で決まります。経度が違えば、同じ星の南中時刻が違う。これは裏返せば、南中時刻を測れば経度が分かるということでもあり、実際に大航海時代の経度測定はこの原理を使っていました

日本の時計が東経135度を基準にしているのも、経度0度をグリニッジに置いたのも、日付変更線が経度180度を通るのも、すべて同じ一本の線でつながっています。経度と時刻は、もともと同じものを別の単位で書いたものです。


衛星の軌道も「1日」を使っている——ただし、どちらの1日か

測位衛星の軌道設計にも、この「1日」が出てきます。

内閣府のみちびき公式サイトによれば、静止軌道(GEO)は赤道上空3万6000kmをちょうど1日で周回する軌道です。地球から見て衛星がいつも空の同じ場所にいるので、放送や通信に使われます。気象衛星ひまわりもこの軌道です。

この「ちょうど1日」は、地球の自転に合わせた1日です。 太陽ではなく地球の回転そのものに同期させないと、空の同じ場所に留まりません。だから静止軌道の周期は、太陽日ではなく恒星日の側に合わせてあります。

みちびきの準天頂軌道は、その静止軌道を変形したものです。

静止衛星の軌道面を傾けた(inclined)もので、この軌道をとる衛星の直下点は、赤道を境に南北に均等に8の字を描きます
(内閣府「測位衛星の3種類の軌道」)

さらに、北半球では地球から遠ざけて速度を落とし、南半球では近づけて速度を上げる。こうすると8の字が南北非対称になり、北半球に約13時間、南半球に約11時間留まります。日本付近に長くいられるのは、この非対称性のおかげです。みちびきの軌道の種類は、この設計を図で追った回にまとめました。

軌道 高度 周期 使っている衛星
MEO(中高度軌道) 2万200km 12時間 GPS(軌道傾斜角55度・6軌道面に4機ずつ)
GEO(静止軌道) 3万6000km 1日 ひまわり、みちびきの静止衛星
IGSO・準天頂軌道 対地同期 みちびきの準天頂軌道衛星

内閣府の公式解説はGPSの周期を「12時間」と丸めた値で示しています。本記事はその公式値をそのまま使い、端数には踏み込みません。


まとめ

  • 1恒星日=23時間56分4.0905秒。太陽日より約3分56秒短い
  • 差の正体は公転による約1度。太陽に対しては360度+1度まわらないと南中しない
  • 365.2422太陽日 = 366.2422恒星日。恒星時は世界時の1.0027379倍の速さで進む
  • そのため星の南中は1日あたり約4分ずつ早くなる。1年でちょうど1周ぶん戻る
  • 恒星日は「自転そのもの」ではなく春分点で定義されており、歳差・章動の影響を含む
  • 平均春分点と真春分点に対応して平均恒星時・真恒星時が分かれ、その差が分点差
  • 時角 H = θ + λ − α に経度λが入る。経度と時刻は同じものの別表現
  • 静止軌道は「ちょうど1日で1周」。この1日は太陽日ではなく地球の自転の側

24時間という数字は、太陽という1つの天体を基準に選んだ結果にすぎません。基準を星に取り替えると、1日は4分短くなる。 座標に測地系があるように、時間にも基準系がある——そのことが、いちばん素朴に見える「1日」という単位に現れています。

出典

  • 日本天文学会「天文学辞典」恒星日 https://astro-dic.jp/sidereal-day/
  • 国立天文台暦計算室「恒星時について」(暦ウィキ/トピックス) https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/topics/html/topics2015.html
  • 内閣府「みちびきの軌道」 https://qzss.go.jp/overview/services/tech01_orbit.html
  • 内閣府「[衛星測位入門] 測位衛星の3種類の軌道」 https://qzss.go.jp/overview/column/orbit_151027.html

本記事の記述は2026年9月時点で公表されている資料に基づきます。0.9972696日・86164.1秒・1.0027379倍・約3分56秒は、暦計算室が示す 365.2422 と 366.2422 の関係から本記事内で計算した値です。衛星の軌道諸元は内閣府の公式解説に記載された値をそのまま用いています。


GeoPrism JPのホーム画面。可視化・学習・連携のメニューが並んでいる

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