太陽の南中は正午ちょうど? — 均時差で年に31分ふれる理由と、東京では一度も12時を過ぎない話

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太陽の南中は正午ちょうど? — 均時差で年に31分ふれる理由と、東京では一度も12時を過ぎない話

太陽の南中は正午ちょうど? — 均時差で年に31分ふれる理由と、東京では一度も12時を過ぎない話

ほとんど、なりません。

日本の時刻は東経135度で決まっている、と学校で習いました。では東経135度の真上に立てば、太陽は12時ちょうどに真南へ来るのでしょうか。

答えは年に31分ぶんふれるです。東経135度でも、南中は11時43分半から12時14分のあいだを動きます。しかも——地球の自転や公転が乱れているわけではありません。


均時差——「時計の太陽」と「本物の太陽」の差

原因は均時差という量です。国立天文台暦計算室の定義はこうです。

視太陽時と平均太陽時の差を均時差といいます。/時計の針が示す位置と実際の太陽の位置のずれともいえます。

視太陽時は、本物の太陽の動きで決めた時刻。南中した瞬間が正午です。日時計が示しているのはこちらです。

平均太陽時のほうは、実在しない太陽を使います。

太陽の代わりに一定のスピードで動く天体=平均太陽を考え、それをもとに定める時刻を平均太陽時といいます。平均太陽は実在するものではない

日本天文学会の定義では、平均太陽は「黄道上を運動する太陽の平均速度と等しい速度で赤道上を運動する仮想の天体」。黄道ではなく赤道の上を、一定速度で動く架空の太陽です。

私たちの時計は、この架空の太陽に合わせて動いています。だから本物の太陽とは食い違う。その差が均時差です。符号の取り方は暦計算室の定義で「均時差=視太陽の時角-平均太陽の時角」。地方平均太陽時での南中時刻は 12時 − 均時差 になります。


原因は2つあって、効き方が違う

均時差が生まれる理由は2つです。暦計算室の「南中時刻は変化する」がそれぞれを説明しています。

① 地球の公転軌道が楕円であること

ケプラーの第2法則により、近日点付近では地球は速く動きます。その分だけ余計に自転しなければならない量は増加、南中から南中までの間隔は長くなり、南中時刻はだんだん遅くなっていきます。遠日点付近では…南中時刻はだんだん早くなっていきます。

② 地軸が公転面に対して約23.4度傾いていること

春分や秋分のころは…南中時刻は早くなっていきます。夏至や冬至のころは…南中時刻は遅くなっていきます。

②がわかりにくいのは、傾きが「速さ」ではなく「向き」の問題だからです。太陽は黄道の上を進みますが、時刻を測る物差しは赤道の上にあります。黄道が赤道に対して傾いているぶん、黄道上を一定速度で進んでも、赤道に投影した進み方は一定になりません。春分・秋分のころは黄道が赤道を斜めに横切るので投影が縮み、夏至・冬至のころは黄道が赤道と平行に近くなるので投影が伸びる。

そして暦計算室は、こう付け加えています。

要因1に比べてわかりづらいとは思いますが、南中時刻に与える影響はむしろこちらの方が勝ります。

大きいのは②のほうです。軌道が楕円だからという説明のほうが有名ですが、実際には地軸の傾きの寄与のほうが上回ります。

①は1年周期、②は半年周期です。周期の違う2つの波を重ねた結果が、あの見慣れない形の均時差のグラフになります。


年間の値——最大は11月上旬、最小は2月中旬

国立天文台暦計算室の暦象年表Web版で、毎日12時(日本標準時)の均時差を計算すると次のようになります。

最大(+) 最小(−) 5月の副次極大 7月の副次極小
2025 11月3日 +16分26秒 2月11日 −14分11秒 5月14日 +3分40秒 7月26日 −6分34秒
2026 11月3日 +16分27秒 2月11日 −14分11秒 5月14日 +3分41秒 7月26日 −6分34秒
2027 11月3日 +16分27秒 2月12日 −14分12秒 5月14日 +3分38秒 7月26日 −6分33秒

極大が2つ、極小が2つ。半年周期の波が1年周期の波に重なっているので、こういう「4つの山谷」になります。

ゼロになるのは年に4回。天文学辞典は「4月15日、6月14日、9月1日、および12月25日」としていますが、年によって1日前後します。4月中旬・6月中旬・9月初め・12月下旬と覚えておけば十分です。

なお天文学辞典は最小値を「約−15分」と概数で書いていますが、実際の計算値は−14分11秒前後です。


東経135度の南中時刻——年間31分の振れ幅

均時差がわかれば、南中時刻が計算できます。緯度34度39分・経度135度00分00秒(兵庫県明石市付近)で、暦象年表Web版に日本標準時での南中時刻を出させると次のようになりました。

いちばん早い日 いちばん遅い日 振れ幅
2024 11月2日 11:43:33 2月12日 12:14:12 30分39秒
2025 11月2日 11:43:34 2月10日 12:14:11 30分37秒
2026 11月3日 11:43:33 2月10〜11日 12:14:10 30分37秒
2027 11月2日 11:43:34 2月11日 12:14:12 30分38秒

約31分。時計の正午と本物の正午は、これだけ離れます。11月上旬に太陽が真南へ来るのは11時43分。学校の4時間目が終わる前です。

そして——東京では、南中が12時を過ぎることが一度もありません。

東京(東経139度44分)の2026年の南中は、11月3日の 11:24:37 から2月11日の 11:55:15 まで。いちばん遅い日でも11時55分です。経度が東経135度より東へ約4度44分あるぶん、南中が約19分早くなるからです。経度差15度が1時間、つまり1度あたり4分

大阪でも名古屋でも仙台でも札幌でも、東経135度より東にある都市では同じことが起きます。東京では「太陽が真南に来たらお昼」という感覚が、最大で35分ずれるということです。より東にある都市では、そのぶんさらに早まります。


「正午ちょうどの日」は年に4日ではない

均時差がゼロになるのが年4回だから、南中がちょうど12時になる日も年に4日——と言いたくなりますが、これは正しくありません。

暦象年表Web版で東経135度の南中時刻を秒単位まで出して数えると、12:00:00 と表示される日は年に0日か1日です。2025年と2027年は0日、2024年は4月15日の1日、2026年は6月13日の1日だけでした。

分単位で「12時00分台」まで広げると年13〜14日ありますが、それらは4月・6月・8〜9月・12月の4つの時期に固まって現れます。

正確な言い方はこうです。南中がちょうど正午になる「瞬間」は年に4回ある。 均時差がゼロを横切る瞬間です。日にちで数えられるものではありません。


アナレンマ——8の字が非対称な理由

毎日同じ時刻に太陽を撮って重ねると、8の字の軌跡が現れます。アナレンマです。

毎日同じ時刻の太陽の位置をたどっていくと、8の字形の軌跡を描きます。これをアナレンマといいます。季節により太陽の南中高度や南中時刻が変化することを反映するものです。

天文学辞典は軸の対応を明示しています。「8の字の長さ方向は太陽高度(赤緯)の変化に対応し、幅方向は視太陽時と平均太陽時の差(均時差)に対応している」。

つまり縦は季節、横は均時差そのものです。上の表で見た「+16分27秒 / −14分11秒」という非対称が、そのまま8の字の左右の非対称になります。暦計算室も「後者〔南中時刻〕の複雑な変動により、8の字は非対称な形になります」と書いています。

アナレンマの用途も辞典に書かれています。「日時計の目盛りに均時差の補正をするために利用される」。日時計に8の字が刻まれているのは飾りではなく、視太陽時を平均太陽時に直すための換算表です。


日の入りがいちばん早いのは、冬至ではない

均時差のいちばん身近な現れ方がこれです。国立天文台のFAQから。

日本では、日の出がもっとも早い日は、夏至より1週間ほど早く、日の入がもっとも遅い日は夏至より1週間ほど後になります。
日の出がもっとも遅い日は冬至の半月ほど後、日の入がもっとも早い日は冬至の半月ほど前になります。

昼の長さが最大になるのは夏至ですが、日の出と日の入りは夏至を挟んで前後にずれます。昼の長さ=日の入り−日の出なので、両端が同じ向きに動けば長さは変わらない。その「同じ向きの動き」を作っているのが均時差です。

2026年の実際の値を暦象年表Web版で計算すると、明石(標高0m)で次のようになります。

項目 日付 二至との差
日の出がいちばん早い 6月13日 夏至(6月21日)の8日前
日の入りがいちばん遅い 6月29日 夏至の8日後
日の入りがいちばん早い 12月5日(16:49) 冬至(12月22日)の17日前
日の出がいちばん遅い 翌1月7日(7:08) 冬至の16日後

「12月に入ると急に日が短くなる」と感じるのに、冬至を過ぎてもしばらく朝が暗いのは、このずれのせいです。

なお暦計算室には「冬至十日前:日の入りが最も早くなるのは冬至の10日前くらいになります」という慣用句が紹介されていますが、実際の計算値は16〜17日前で、FAQの「半月ほど前」のほうが実態に近い値です。


日時計と腕時計の差は、2つの量でできている

日時計が示すのは視太陽時。腕時計が示すのは東経135度の平均太陽時系(日本標準時)。この2つの差は、次の2つの和になります。

腕時計 − 日時計 = −均時差 + (135° − その場所の経度) ÷ 15 [時間]

第1項が季節で±16分/−14分。第2項が場所で固定。時計と太陽の食い違いは「いつ」と「どこ」の2つでできている、というのが均時差の一番のポイントです。

(この式は、暦計算室の「地方平均太陽時での南中=12時−均時差」と「経度差15度=1時間」を組み合わせて導いたもので、この形で書かれた一次資料があるわけではありません。)

ひとつ注意を。日本標準時は明治19年の勅令で東経135度の時刻と定められましたが、現在のJSTは原子時計で作られています。情報通信研究機構(NICT)が水素メーザとセシウム原子時計で協定世界時(UTC)を刻み、それを9時間進めたものがJSTです。「東経135度の平均太陽時」は制定時の定義であって、現在の実装ではありません。


おまけ——明石の子午線標識とGPSは120mずれている

東経135度の話には、測地系の側から見ると面白い続きがあります。明石市立天文科学館の公式サイトから。

明石市内の多くの子午線標識は、天文測量による東経135度子午線上に建立されています。GPSで表示される東経135度とは120メートルほどのずれがあります。これは間違っているのではなく、天文測量と地図測量の定義の違いによるもので、コダワリのずれです。

同じ「東経135度」が、測り方によって120mずれる。

天文測量は星の観測で経度を決めます。基準になるのは鉛直線、つまり重力の向きです。いっぽうGPSが表示する経度は、地球を近似した回転楕円体の上で定義されています。重力の向きと楕円体の法線は一致しないので(この差を鉛直線偏差といいます)、同じ地点でも天文経度と測地経度は一致しません。

同館の沿革によれば、1918年に東京天文台の経度が10.4秒(約267m)修正され、1928年の観測で最初の標識が4.046秒=103m西にずれていたと判明し、1951年の再観測で11.1m東へ動かした、という経緯もあります。「基準を決めなければ位置は決まらない」という測地系の話が、そのまま道路の標識になっているわけです。

時刻も位置も、基準を先に決めてから測る。均時差は、その基準(平均太陽)と実物(本物の太陽)の差に名前を付けたものでした。

出典

  • 国立天文台暦計算室「暦Wiki/太陽時」 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/C2C0CDDBBBFE.html
  • 国立天文台暦計算室「暦Wiki/日の出入りと南中/南中時刻は変化する」 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/C6FCA4CEBDD0C6FEA4EAA4C8C6EEC3E62FC6EEC3E6BBFEB9EFA4CFCAD1B2BDA4B9A4EB.html
  • 国立天文台暦計算室「暦Wiki/アナレンマ」 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/C6FCA4CEBDD0C6FEA4EAA4C8C6EEC3E62FA5A2A5CAA5ECA5F3A5DE.html
  • 国立天文台暦計算室「暦Wiki/標準時」 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/C9B8BDE0BBFE.html
  • 国立天文台 よくある質問「日の出、日の入りの時刻は毎日どのくらい変化するのですか?」 https://www.nao.ac.jp/faq/a0104.html
  • 国立天文台 よくある質問「均時差とは何ですか?」 https://www.nao.ac.jp/faq/a0107.html
  • 国立天文台暦計算室「暦象年表 Web版」(グリニジ恒星時・均時差/太陽系天体の出入りと南中) https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/cande/
  • 日本天文学会「天文学辞典」均時差/平均太陽/アナレンマ/太陽時 https://astro-dic.jp/equation-of-time/
  • 情報通信研究機構(NICT)「日本標準時」 https://www.nict.go.jp/sts/jst.html
  • 明石市立天文科学館「明石と子午線」「当館について」 https://www.am12.jp/akashi-shigosen/

本記事の記述は2026年9月時点で公表されている資料に基づきます。均時差の値・南中時刻・日の出入りの日付は、国立天文台暦計算室「暦象年表 Web版」に計算させた値です(標高0m・大気差考慮)。年によって1日程度前後します。日時計と時計の差の式は、暦計算室の記述を組み合わせて本記事内で導いたものです。


GeoPrism JPのズレマップ。旧日本測地系と世界測地系で同じ地点の座標が離れて表示されている

「基準が違えば、同じ場所の値が変わる」——時刻で起きたことは、緯度経度でも同じように起きます。それを地図の上で見られるアプリを作っています。

GeoPrism JP(測地系のズレを見て・学べるiOSアプリ)
https://apps.apple.com/app/id6780149823


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