【クイズ解説㉒】市区町村の面積を全部足すと都道府県の面積になる? — 国土面積の測り方のきほんを確認する

,

【クイズ解説㉒】市区町村の面積を全部足すと都道府県の面積になる? — 国土面積の測り方のきほんを確認する

【クイズ解説㉒】市区町村の面積を全部足すと都道府県の面積になる? — 国土面積の測り方のきほんを確認する

一致しないことがあります。

県の面積を調べたついでに、市の面積も並べて足してみたことはないでしょうか。合計は、県の値とぴったり合うでしょうか。答えは「合わないことがある」で、しかも理由は測量の誤差ではありません。丸めの順番だけです。ただし、丸めより手前にもっと大きな決めごとがあります。そもそも陸の広さは、海面の高さを決めないと存在しません。


第1問:ある県の面積と、その県内の市区町村の面積の合計。この2つは?

国土地理院が公表している「全国都道府県市区町村別面積調」。ある県の面積と、その県内の全市区町村の面積を足した値を比べると、どうなるでしょうか。

  1. 必ず完全に一致する
  2. 境界未定地があるぶん、市区町村の合計のほうが必ず小さくなる
  3. 一致しないことがある。理由は四捨五入
  4. 一致しないことがある。理由は測量の誤差

正解:3(一致しないことがある。理由は四捨五入)

なぜそうなるのか

国土地理院は、面積調の公表値について「公表する単位ごとに測定値の小数第三位を四捨五入している」としています。県は県として丸め、市は市として丸める。だから丸めてから足すか、足してから丸めるかで答えが変わります。

国土地理院自身が挙げている例が分かりやすいので、そのまま並べます(単位はkm²)。

公表値 測定値
○○県 61.01 61.012
A市 20.00 20.004
B市 20.00 20.004
C市 21.00 21.004
3市の公表値の合計 61.00

県の測定値61.012を丸めれば61.01。ところが3市を先に丸めてから足すと61.00になります。差は0.01km²。どちらかが間違っているのではなく、どちらも規則どおりに丸めた結果です。

これは面積に限った話ではありません。表計算で「各行を四捨五入してから合計した値」と「合計してから四捨五入した値」が合わない、あの現象と同じです。データを扱う人がいちばんよく踏む段差のひとつが、国土の面積という国の基本統計でも起きている、というだけのことです。

ついでに——なぜ0.001km²より細かい値は見られないのか

小数第三位以下は非公表とされています。表に出てくる数字は、はじめから丸められたものです。

選択肢2について

境界未定地の扱いは実際に面積調の中で論点になりますが、上の一致しない例は境界未定地とは関係ありません。丸めだけで説明がつきます。

選択肢4について

測量の誤差だとすると、県ごとにばらばらな向きの差が出るはずです。この例の差は0.01km²=公表単位のちょうど1桁分で、丸めが原因であることがはっきり出ています。


第2問:国土面積を測るとき、海岸線はどこに引く?

国土地理院の面積調では、陸と海の境である海岸線をどの高さの水際に取っているでしょうか。

  1. 干潮時の水際
  2. 満潮時の水際
  3. 平均海面と交わる線
  4. 東京湾平均海面(T.P.±0m)と交わる線

正解:2(満潮時の水際)

なぜそうなるのか

面積調の対象は電子国土基本図(地図情報)の海岸線と市区町村等の境界で囲まれた地域で、この海岸線は満潮時の水涯線を表します。潮が満ちたときの水際が、陸の縁です。

ここから2つのことが言えます。

  • 干潮のときだけ現れる干潟は、国土面積に入っていない
  • 河川や湖沼は陸域に含める。河口については、海岸線の自然な形状に従って河口両岸の先端を結ぶ

3つ目の「河口両岸の先端を結ぶ」は地味ですが、決めないと数字が決まりません。どこまでを川と見るかで面積が変わってしまうからです。面積という量は、境界の定義を先に固定しないと存在しない——面積調の規則はそのことの積み重ねでできています。

選択肢3・4について

平均海面や東京湾平均海面(T.P.)は標高の基準であって、地図上の海岸線の基準ではありません。「海面からの高さ」と「海と陸の境」で、使う海面が違うわけです。この2つは混同しやすいところなので、標高の基準の話とあわせて押さえておくと整理できます。


おまけ:3か月ごとに測り直されている

面積調は測量法第12条に基づく基本測量に関する長期計画のもとで、1月1日・4月1日・7月1日・10月1日の年4回を基準日として作られ、それぞれ3月末・6月末・9月末・12月末を目途に公表されます。

直近では、2026年(令和8年)4月1日時点の国土面積が377,974.87km²(2026年6月26日公表)。1年前どうしの比較では、令和6年10月1日時点の377,975.64km²に対し令和7年10月1日時点が377,979.67km²で、+4.03km²でした。

増減の主な要因として国土地理院が挙げているのは4つ。

  • 能登半島地震による海岸の隆起
  • 埋立て
  • 自然海岸の侵食・堆積
  • 地図データの詳細化・高精度化

最後の1つだけ性格が違います。陸は動いていないのに数字が動く。測り方が細かくなったぶん、これまで直線で結んでいた入り江が刻まれて、面積が変わるわけです。

そしてこの数字は、国勢調査報告における人口密度の算出地方交付税算定の基礎データとして使われます。地図が詳しくなると、人が1人も動いていなくても人口密度の数値が動く。国土面積の測り方は、そこまで効いています。

出典

  • 国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」 https://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/MENCHO-title.htm
  • 国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調 よくあるご質問(FAQ)」 https://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/MENCHO-faq.html

本記事の記述は2026年9月時点で公開されている資料に基づきます。数値はすべて上記の一次資料から引いたものです。面積の公表値は基準日ごとに更新されるため、最新の値は国土地理院のページでご確認ください。


次に確認する


開発者より: アプリ・Kindle本・オープンソースの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。


お願い
本記事の情報は参考目的で掲載しており、正確性・完全性を保証するものではありません。誤記・不正確な情報がございましたら、コメント欄よりご指摘いただければ、確認のうえ修正いたします。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

トップへ戻る