
日本の島はいくつある? — 6,852島が14,125島になったのは、島が増えたからではない
14,125島です。 国土地理院が電子国土基本図を用いて、一定の条件のもとで数えた結果として公表しています。長らく使われてきた6,852島から倍以上に増えましたが、新しい島が7,000個以上見つかったわけではありません。増えたのは島ではなく、地図の細かさのほうです。
「島」の定義と、「数え方」は別のもの
まずここが分かれ目です。
島の定義は、日本が1996年に批准した国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約)第121条で決まっています。「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるもの」。
一方、島の数え方には国際的な取り決めがありません。「どこまでの小さい岩を1つと数えるか」を決めないと、数は無限にも有限にもなってしまいます。そこで国土地理院は、次の条件を置いて数えました。
- 離島振興法・有人国境離島法などの法令等に基づく島を、重複なく数える
- それ以外は、電子国土基本図に描かれた全陸地のうち、周囲長0.1km以上の海岸線で囲われた陸地を対象とする。ただし、資料の範囲内で自然に形成されたと判断できるもののみ
- 湖沼等にある陸地は対象外
条件②の「周囲長0.1km以上」は新しい発明ではなく、1987年の海上保安庁による調査で使われた基準を踏襲したものです。同じものさしを当て直した、というのが今回の計数の性格です。
注意したいのは、条件②に満たない小さな陸地も「島」ではあるということ。条約の定義に照らせば、周囲長0.1km未満の陸地も島です。14,125という数字は「条約上の島の総数」ではなく、「この条件で数えたときの数」です。
電子国土基本図には、12万を超える陸地が描かれている
計数の母数になったのは、令和4年1月時点の電子国土基本図に描かれた120,729の陸地です。ここから、周囲長0.1km以上・自然形成・湖沼内でない、という3つのふるいにかけて14,125島が残りました。
つまり地図の上には、島として数えられなかった陸地のほうが圧倒的に多いということです。数えられなかった陸地も、もちろん日本の領土です。
湖沼内の陸地が除かれるルールも、具体例で見ると分かりやすくなります。洞爺湖の中にある「中島」は、名前も形も立派な島ですが、海に囲まれていないので今回の計数の対象外です。
一つに見える島が、7つに数えられることもある
国土地理院は具体例として、江の島の周辺を挙げています。ふだん「江の島」と一括りに呼んでいる区域も、条件に照らして陸地を分けていくと、自然に形成された周囲長0.1km以上の島が7つ該当します。
「島がいくつあるか」は、私たちが名前で認識している単位とは一致しません。ここが直感と数字がずれる最大の理由です。
同じ理由で、人工的にできた陸地は数に入りません。国土地理院は、長崎空港を「自然に形成された陸地と判断した例」、横浜の八景島を「自然に形成された陸地ではないと判断した例」として、昭和期の旧版地図と現在の地図を並べて示しています。昔の地図を見れば、埋め立て前の姿が分かるという判定方法です。
なぜ倍以上になったのか
理由は一つ、測量技術の進歩によって地図の表現が詳しくなったからです。
海岸線の描き方を思い浮かべてください。粗い地図では、岬とその先の岩がひとつながりの陸地として描かれます。より詳しい測量ができるようになると、あいだの細い水路が表現され、岩は別の陸地として分離します。すると、それまで数に入っていなかった岩が「周囲長0.1km以上の陸地」として1島に数えられる——これが7,000島以上の差の正体です。
粗い地図 詳しい地図
┌────────┐ ┌──────┐ ┌──┐
│ 1 島 │ → │ 1 島 │ │2 │ ← 水路が描かれて分離した
└────────┘ └──────┘ └──┘
海岸線は、細かく測るほど長くなり、複雑になります。どこまで細かく測るかを決めない限り、海岸線の長さも島の数も定まりません。地図の縮尺が「見た目の細かさ」だけでなく「数えられる対象の数」まで左右する、という例です。
- 地図の縮尺と図上の精度はどう関係する? — 縮尺が何を決めているのかは、こちらで図解しています
領土・領海・国土面積は変わらない
数が倍以上になっても、日本の領土・領海に影響はありません。国土地理院はこの点を明記しています。
- 国土の面積は、島の数ではなく電子国土基本図に基づいて全ての陸地を計測して出している
- 領海の外縁を根拠づける領海基線を有する島(国境離島)の数とは、別途、整合が確保されている
- 今回の条件を満たさない人工の陸地や小さな自然島も、すべて日本の領土である
「島の数」は国土の一面を表す統計であって、権利の範囲を決める数字ではない、という整理です。
領海・排他的経済水域を支える島がどう守られているかについては、日本最南端・沖ノ鳥島の座標で扱っています。
島が多いのはどこか
都道府県別の上位3つは、長崎県 1,479島、北海道 1,473島、鹿児島県 1,256島です(令和4年1月時点の電子国土基本図で計数。2府県にまたがる島は内数として扱われます)。
九州の西と南に島が集中しているという分布は、地図の別の場所にも顔を出します。日本の平面直角座標系が19の区域に分かれているのは、南北にも東西にも大きく広がった国土を、ひずみの少ない範囲で区切る必要があるからです。九州から南西諸島にかけては、狭い範囲に系がいくつも並びます。

- 平面直角座標系はなぜ19に分かれている? — 島が散らばった国土を平面に載せるための工夫です
この数字は、これからも変わる
国土地理院は、今後も数が変わりうるとしています。理由は2つです。
- 測量技術がさらに進歩すると、計上の対象になる陸地が変わる
- 自然そのものが変化する——浸食、海面の上昇、火山活動など
「日本の島は14,125島」は、2023年に公表された、令和4年1月時点の地図に対する答えです。1987年の6,852島がそうであったように、これも一つの時点の値だと考えておくのが正確です。地図が更新されるたびに、数え直せば違う数字が出ます。
まとめ
- 日本の島は 14,125島(国土地理院・令和4年1月時点の電子国土基本図で計数)
- 従来の6,852島(海上保安庁・1987年公表)から倍増したのは、島が増えたのではなく地図が詳しくなったから
- 数え方の条件は「周囲長0.1km以上」「自然に形成」「湖沼内は除く」の3つ
- 条約上の島の定義には大きさの下限がないので、実際の島は公表値より多い
- 領土・領海・国土面積には影響しない
- 都道府県別の上位は長崎・北海道・鹿児島
- 技術の進歩と自然の変化で、今後も数は変わりうる
出典
- 国土地理院「日本の島の数」 https://www.gsi.go.jp/kihonjohochousa/islands_index.html
- 国土地理院「日本の島の数 よくあるご質問(FAQ)」 https://www.gsi.go.jp/kihonjohochousa/islands_FAQ.html
- 国土地理院「我が国の島を数えました」(報道発表) https://www.gsi.go.jp/kihonjohochousa/pressrelease20230228.html
- 国土地理院「我が国の島の数一覧(全国及び都道府県別)」 https://www.gsi.go.jp/common/000247634.pdf
記載は2026年8月時点の公開資料にもとづく整理です。島の数は電子国土基本図の更新や計数条件の見直しによって変わりうるため、最新の値は国土地理院のページをご確認ください。
次に確認する
- 日本最南端の島がどんな座標で守られているかを確認する — 小さな島が広い海の権利を支えるしくみです
- 離島の標高が本土と別の基準で測られている理由を確認する — 島が多い国ならではの高さの事情です
- 地図の縮尺が図上の精度をどう決めるかを確認する — 「細かく測るほど数が増える」の背景です
- 海岸線データを実際に開くと何が入っているかを確認する(GeoConverter Pro) — 基盤地図情報のGMLから海岸線を取り出す実務側の話です
- 書籍でまとめて学ぶ: 『日本の測地系Q&A』第5章「国土のはしと基準点」(Kindle Unlimited対応)
入門から通しで読むなら: 『日本の測地系がわかる本』 — 旧日本測地系から JGD2024 まで、座標がズレる理由と実務での扱いを1冊にまとめました(Kindle Unlimited 対応)
開発者より: アプリ・Kindle本・オープンソースの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。
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