【クイズ解説⑭】「元期」と「今期」はどう違う? — 動く座標のきほん

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【クイズ解説⑭】「元期」と「今期」はどう違う? — 動く座標のきほん

【クイズ解説⑭】「元期」と「今期」はどう違う? — 動く座標のきほん

GeoPrism JP の「学ぶ・クイズ」から毎回2問ほどを取り上げて解説する連載、第14回です。第13回は地理院タイルのズームレベルを扱いました。

今回のテーマは 元期(げんき)と今期(こんき) です。測地系の学習でいちばん引っかかりやすい概念で、しかもここを飛ばすとセミダイナミック補正の話が丸ごと分からなくなります。じっくり2問。

元期と今期を地図で学ぶ


第1問:「元期の座標」とは何を指す?

測量で使う「元期(げんき)の座標」とは、次のうちどれを指しますか。

  1. その点を最初に設置したときに観測された座標
  2. 成果をそろえるために定めた、基準となる時点の座標
  3. いま実際に GNSS で観測して得られた座標
  4. 地震の直前に観測された座標

正解:2(成果をそろえるために定めた、基準となる時点の座標)

日本列島はプレートの上にあり、地表は1年あたり数cmの規模で動き続けています。ということは、同じ標石を測っても、測る年が違えば数値が変わるわけです。

これでは地図も図面も成立しません。そこで「この時点の座標に全国をそろえる」と決めた基準時点を置きます。これが元期です。

用語 意味 ひとことで言うと
今期 いま実際に観測した時点の座標 「測った生の値」
元期 成果をそろえるための基準時点の座標 「地図に載せる値」
地殻変動補正 今期を元期に引き戻す計算 「動いた分を巻き戻す」

選択肢1(設置時の観測値)が不正解なのがポイントです。元期は点ごとの事情ではなく、成果全体で共通に定められた時点です。日本の測地成果では、多くの地域で 1997年1月1日(1997.0)が元期として使われてきました。ただし、大きな地震のあった地域では別の元期が設定されることがあります。

選択肢3は「今期」の説明そのもの、選択肢4は補正とは関係のない引っかけです。

たとえ:動く歩道の上に立って写真を撮る。今期は「いま写真に写っている位置」、元期は「出発点を基準に描き直した位置」。地図に載せたいのは後者です。

プレート運動による地殻変動


第2問:今期を元期にそろえる補正はどれ?

GNSS 観測で得た「今期」の座標を、定常的な地殻変動の分だけ戻して「元期」の座標にする補正は次のうちどれですか。

  1. ジオイド補正
  2. セミダイナミック補正
  3. 対流圏遅延補正
  4. アンテナ位相中心補正

正解:2(セミダイナミック補正)

セミダイナミック補正は、プレート運動による定常的な地殻変動の累積を、観測時点(今期)から基準時点(元期)へ戻す補正です。国土地理院が年度ごとに補正パラメータを公表しており、その年度の観測にはその年度のパラメータを使います。

他の選択肢も測量では実在する補正ですが、目的がまったく違います。

選択肢 何をする補正か 元期・今期と関係あるか
ジオイド補正 楕円体高から標高を求める(高さの補正) 関係なし
セミダイナミック補正 今期の座標を元期に戻す これが正解
対流圏遅延補正 大気による電波の遅れを補正する 関係なし
アンテナ位相中心補正 アンテナの電気的な中心位置のずれを補正する 関係なし

「セミ(半)」ダイナミックという名前の意味

完全に動的(フルダイナミック)な方式なら、座標は常に今期の値で扱い、地図もそのつど更新することになります。しかしそれでは地図も台帳も落ち着きません。

かといって、まったく動かないもの(スタティック)として扱えば、年々ズレが溜まります。

そこで、「成果は元期で固定する。ただし観測値は補正で元期に戻す」という折衷をとる。これが「セミ(半)」ダイナミックと呼ばれる理由です。

セミダイナミック補正の補正量を地図で見る

地震のときは別の仕組み

セミダイナミック補正が扱うのは、じわじわ進む定常的な変動です。地震のように短時間で大きく動いた分は、この補正ではカバーできません。

そのため地震の後には、地震による変位を扱う別の補正(PatchJGD など)が公表されます。この使い分けは【クイズ解説①】地震のあと、座標はどう直す?で扱いました。

つまり、座標を元期にそろえるための道具は複数あって、変動の種類(定常か、地震か)で使い分けるというのが全体像です。


ひとことメモ:補正量は場所によって違う

セミダイナミック補正の補正量は、日本全国どこでも同じではありません。プレート境界に近い地域ほど大きく、内陸の安定した地域では小さくなります。

GeoPrism JP のヒートマップでは、この補正量の地域差を色で見ることができます。数式や表で見ると抽象的な話が、地図に色を載せると「なぜ場所で違うのか」が一目で腑に落ちます。

補正量が場所で違う理由そのものは【クイズ解説⑥】補正量はなぜ場所で違う?でも扱っています。あわせて読むと、今回の元期・今期の話と地図の色がつながります。

GeoPrism JP ヒートマップの表示例


まとめ

  • 今期=いま観測した時点の座標。元期=成果をそろえるために定めた基準時点の座標
  • 元期は点ごとではなく、成果全体で共通に定められる(日本では長く 1997.0 が使われてきた)
  • 今期を元期へ戻すのが地殻変動補正。定常的な変動を扱うのがセミダイナミック補正
  • 「セミ(半)」なのは、成果は元期で固定しつつ、観測値だけ補正で戻すという折衷方式だから
  • 補正パラメータは年度ごとに公表される。観測年度に合ったものを使う
  • 地震による急な変位は別の補正(PatchJGD など)で扱う
  • 補正量には地域差がある。ヒートマップで色として見ると理解が早い

次回もクイズから2問を取り上げて解説します。GeoPrism JP の学習モードの使い方は学習モード・クイズの使い方にまとめています。


出典

  • 国土地理院「測量計算サイト(セミダイナミック補正)」 https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/semidyna/web/index.html
  • 国土地理院「セミダイナミック補正」 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/sokuchikijun40003.html
  • 国土地理院「日本測地系2011(測地成果2011)」 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/jgd2011.html
  • 国土地理院「位置の基準・測量情報」 https://www.gsi.go.jp/sokuchi/index.html

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