【クイズ解説⑰】メルカトル図法で緯度60度の場所は何倍に伸びる? — 面積が実際とずれるしくみ

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【クイズ解説⑰】メルカトル図法で緯度60度の場所は何倍に伸びる? — 面積が実際とずれるしくみ

【クイズ解説⑰】メルカトル図法で緯度60度の場所は何倍に伸びる? — 面積が実際とずれるしくみ

GeoPrism JP の「学ぶ・クイズ」から毎回2問ほどを取り上げて解説する連載、第17回です。第16回は三角測量の基線を扱いました。

今回のテーマは 地図のゆがみ。世界地図でグリーンランドが巨大に見えるのはよく知られた話ですが、「何倍に伸びているのか」は簡単な式で出せます。そしてもう1問、日本の測量が使っている投影法はメルカトル図法と関係があるのか——という話につなげます。


第1問:メルカトル図法で、緯度60度の場所は東西方向に何倍に引き伸ばされる?

メルカトル図法の世界地図では、高緯度ほど東西に引き伸ばされます。緯度60度の地点では、赤道上と比べておよそ何倍に伸びているでしょうか。

  1. 約1.2倍
  2. 約2倍
  3. 約4倍
  4. 約8倍

正解:2(約2倍)

なぜそうなるのか

地球儀を思い浮かべてください。経線(縦の線)は、赤道でいちばん離れていて、極に近づくほど寄り集まり、極点で1点に集まります。緯度φの地点で、経線どうしの間隔は赤道上の cos φ 倍 に縮んでいます。

ところがメルカトル図法の地図では、経線を すべて平行な縦線 として描きます。つまり、本来は縮んでいるはずの間隔を、赤道と同じ幅まで引き伸ばしているわけです。その引き伸ばし率が

東西方向の拡大率 = 1 / cos φ

緯度60度なら cos 60° = 0.5 ですから、1 ÷ 0.5 = 2倍。ちょうど2倍です。

緯度 cos φ 東西方向の拡大率 面積の拡大率
0°(赤道) 1.00 1.0倍 1.0倍
35°(日本の本州付近) 0.82 約1.2倍 約1.5倍
60° 0.50 2.0倍 4.0倍
70° 0.34 約2.9倍 約8.5倍
80° 0.17 約5.8倍 約33倍

面積はもっと大きくずれる

メルカトル図法は 正角図法——つまり、その場所の形(角度)が正しく保たれる図法です。形を保つには、東西を2倍に伸ばしたら南北も2倍に伸ばさなければなりません。結果として、面積は拡大率の2乗でふくらみます。

緯度60度なら面積は4倍、70度あたりでは8倍を超えます。グリーンランドの大半はこの緯度帯にあります。「グリーンランドがアフリカと同じくらいに見える」のは、目の錯覚ではなく、図法が実際にそれだけ拡大しているからなのです。

選択肢のどこが違うか

  • 1(約1.2倍):これは緯度35度あたり、つまり日本の本州付近の値です。日本の緯度なら、東西の伸びは2割ほどで済んでいます
  • 3(約4倍):これは緯度60度の面積の拡大率です。長さと面積を取り違えたときに出る数字です
  • 4(約8倍):緯度70度あたりの面積の拡大率に近い値です

第2問:日本の平面直角座標系が使っている投影法は?

日本の測量で使われる平面直角座標系は、地球を平面に投影して作られています。その投影法として正しいものはどれでしょうか。

  1. メルカトル図法(世界地図と同じもの)
  2. 横メルカトル図法(円筒を横倒しにしたもの)
  3. 正距方位図法
  4. 投影はしておらず、緯度経度をそのまま縦横に置いている

正解:2(横メルカトル図法)

なぜそうなるのか

メルカトル図法は、地球に円筒をかぶせて、赤道で接するように投影する図法だと考えると分かりやすくなります。接している赤道の上ではゆがみがなく、そこから南北に離れるほどゆがみが増えていきます。

横メルカトル図法は、この円筒を90度倒したものです。赤道ではなく、ある1本の経線(中央子午線)で接するようにします。すると、ゆがみが小さいのは中央子午線の上とその近くになり、東西に離れるほどゆがみが増える形に変わります。

日本の平面直角座標系は、この横メルカトル図法(ガウス・クリューゲル図法とも呼ばれます)を使っています。そして、東西に離れるとゆがむという性質があるからこそ、日本全国を1枚で覆わず、19の系に分けているのです。

平面直角座標系19系の区分

さらに、原点での縮尺係数をあえて 0.9999 に設定することで、ゆがみを系の中心と端に振り分けています。1.0000にすると中心では正確でも端のゆがみが片側に偏ってしまうためです。

メルカトル図法 横メルカトル図法(平面直角座標系)
円筒が接する場所 赤道 中央子午線(南北の1本の線)
ゆがみが小さい範囲 赤道付近 中央子午線の東西に近い範囲
ゆがみが増える向き 南北に離れるほど 東西に離れるほど
対応範囲 世界全体を1枚で 狭い範囲に区切る(日本は19系)
主な用途 世界地図・航海図・地図アプリ 測量・図面・座標計算

選択肢のどこが違うか

  • 1(メルカトル図法):世界地図やWeb地図で使われるのはこちらですが、そのまま測量に使うと緯度が上がるほど距離が伸びてしまいます。Web地図の座標系と平面直角座標系を取り違える事故は実際に起きています(→Webメルカトルと平面直角座標系を取り違えない(GeoConverter Pro)
  • 3(正距方位図法):中心から各地点への距離と方位が正しく出る図法で、航空路の図などに使われます。日本の平面直角座標系とは別物です
  • 4(投影していない):緯度経度をそのまま縦横に置いたものは正距円筒図法と呼ばれ、これも1つの投影です。ただし平面直角座標系はメートル単位のXY座標なので、これには当たりません

「どの地図で見ているか」で、大きさの感覚は変わる

今回の2問をまとめると、こうなります。

  • メルカトル図法の東西の拡大率は 1 / cos φ。緯度60度でちょうど2倍
  • 正角図法なので南北も同じだけ伸び、面積は2乗でふくらむ(緯度60度で4倍)
  • 日本の緯度(35度前後)なら東西の伸びは約1.2倍。世界地図の中では、日本はそれほどゆがんでいない
  • 日本の測量が使うのは 横メルカトル図法。ゆがみが増える向きが東西に変わるため、19の系に区切って使う
  • 縮尺係数 0.9999 は、系の中でゆがみを振り分けるための工夫

地図は「地球をどう平らにしたか」で見え方が変わります。世界の広がりを1枚で見たいときと、現場の距離を正しく測りたいときとでは、そもそも使う図法が違う——そこが分かると、地図アプリの座標と測量の座標を混ぜてはいけない理由も腑に落ちます。

GeoPrism JP では、平面直角座標系19系の区分や、測地系ごとの座標のズレを地図上で確かめられます。今回の話でいえば「日本を19に区切っている理由」を、地図の側から見に行けます。

出典

  • 国土地理院「わかりやすい平面直角座標系」 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/jpc.html
  • 国土地理院「平面直角座標系(平成十四年国土交通省告示第九号)」 https://www.gsi.go.jp/LAW/heimencho.html
  • 国土地理院「地図投影法」 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/sokuchikijun41012.html

拡大率の数値は、地球を球と見なした概算です。実際の投影計算は回転楕円体上で行われるため、厳密な値はわずかに異なります。


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