【クイズ解説㉙】高い山の下はどうなっている? — 根の厚さ・ブーゲー異常・氷河の跡を3問で確認する

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【クイズ解説㉙】高い山の下はどうなっている? — 根の厚さ・ブーゲー異常・氷河の跡を3問で確認する

【クイズ解説㉙】高い山の下はどうなっている? — 根の厚さ・ブーゲー異常・氷河の跡を3問で確認する

地下深くまで「根」が伸びています。 地殻はマントルの上に浮いているので、高く出ている場所ほど深く沈んでいる——氷山と同じ理屈です。この一点を押さえると、重力の測り方も、氷河が消えた土地がいまも動いている理由も、同じ式で説明できます。3問で確かめます。


第1問:富士山の「根」はどれくらいの厚さか

地殻がマントルに浮いているとして、標高3,776mの富士山を支えている地殻の「根」は、単純なモデルでどれくらいの厚さになるでしょう。

  1. 約1.7 km
  2. 約17 km
  3. 約170 km
  4. 根は無い。山は地殻の上に載っているだけ

正解:2(約17 km)

なぜそうなるのか

エアリーのモデルでは、浮力のつり合いから根の厚さ t は次の式になります。

t = h × ρc / (ρm − ρc)
    h  : 山の標高
    ρc : 地殻の密度
    ρm : マントルの密度

代表的な値 ρc = 2.67、ρm = 3.27 g/cm³ を入れると、倍率は 2.67 ÷ 0.60 = 約4.45倍。

t = 3,776 m × 4.45 ≒ 16,800 m ≒ 約17 km
密度の組み合わせ 倍率 富士山 3,776 m の根
ρc=2.67 / ρm=3.27 4.45倍 約16.8 km
ρc=2.80 / ρm=3.30 5.60倍 約21.1 km

密度の取り方で16.8〜21.1kmと変わるので、「4〜5倍」は桁の感覚であって精密な値ではありません。それでも選択肢1(1.7 km=標高の半分以下)や選択肢3(170 km=地殻の厚さを超える桁)とは、はっきり区別がつきます。

選択肢4は、19世紀までの素朴な見方です。次の問がその否定の話になります。


第2問:山岳域でブーゲー異常はどうなるか

重力を測って理論値を引いた「異常」には2種類あります。足元の岩石ぶんまで差し引くブーゲー異常は、高い山の地域でどうなるでしょう。

  1. 大きな正になる。山の岩石ぶん重いから
  2. 大きな負になる
  3. ほぼゼロになる。補正が効いて打ち消されるから
  4. 山では測れないので値が存在しない

正解:2(大きな負になる)

なぜそうなるのか

2つの補正の役割を並べると見えてきます。

補正 何をするか 係数
フリーエア補正 標高が高いぶん地球中心から遠いことだけを補正 0.3086 mGal / m
ブーゲー補正 さらに、足元にある岩石の引力ぶんを差し引く 0.04193 × ρ mGal / m(ρ=2.67 なら 0.1120)

ブーゲー異常は足元の岩石を取り除いたあとに残る値です。取り除いたあとに何があるかというと——第1問の「根」、つまり周囲のマントルより軽い地殻です。軽いものが深くまであるのだから、重力は理論値より小さくなる。だから大きな負になります。

選択肢3の「ほぼゼロ」はフリーエア異常のほうです。フリーエア異常は地形の質量を残したままなので、山の引力(正)と根の質量不足(負)がおおむね打ち消し合い、アイソスタシーが成り立っている山岳域では広い範囲で平均するとゼロに近づきます。

フリーエア異常  山の質量(+) と 根の質量不足(−) が打ち消す → 平均するとゼロに近い
ブーゲー異常    山の質量を先に引く → 根の質量不足(−)だけが残る → 大きな負

つまり「山の下が重い」のではなく「山の下は軽い」。これがアイソスタシーのいちばん端的な証拠です。重力そのものが緯度と高さでどう変わるかは、重力は場所によってどれだけ違う? にまとめてあります。


第3問:氷河が消えた土地は、いまどうなっているか

かつて厚い氷河に覆われ、その氷が消えたスカンジナビア半島やカナダの土地は、現在どうなっているでしょう。

  1. 氷の重みが無くなった時点でつり合い、もう動いていない
  2. 氷のぶん軽くなったので、周囲より速く侵食されて低くなっている
  3. いまもゆっくり隆起し続けている
  4. 氷が消えたぶん沈降している

正解:3(いまもゆっくり隆起し続けている)

なぜそうなるのか

厚い氷が載っていた土地は、その重みで押し下げられた状態でつり合っていました。氷が消えると、つり合いの位置が上へ移ります。ところが地下のマントルは粘り気が非常に大きいので、すぐには戻れません。数千年、数万年という時間をかけて、ゆっくり新しいつり合いへ向かって浮き上がっていきます。これを氷河性地殻均衡(ポストグレイシャル・リバウンド)といいます。

ポイントは、アイソスタシーが「すでにつり合っている状態」を指す言葉だということです。自然界にはつり合いの途中にある場所があり、そこは上下に動き続けています。

つり合いの途中にある例 何が起きているか
氷河が解けた地域 押し下げられていた地殻が戻る途中
急速に隆起している山地 削られる速さと持ち上がる速さが釣り合っていない
大地震の後 ずれた地殻が新しいつり合いへ向かう

選択肢1が間違いなのは「つり合いの回復に時間がかかる」からです。選択肢4は向きが逆——沈むのは氷が載っていくときです。

ここが測地の話につながります。アイソスタシーからのずれは「いま動いている場所」の目印であり、座標や標高が時間とともに変わり続ける理由のひとつでもあります。


3問のまとめ

問 答えの核心 数字・キーワード
第1問 根の厚さは h × ρc/(ρm−ρc) 富士山3,776m → 約17 km(倍率4〜5倍)
第2問 足元の岩石を引くと、軽い根だけが残る ブーゲー異常は大きな負/フリーエア異常は平均ゼロ近く
第3問 つり合いの回復には時間がかかる 氷河性地殻均衡=いまも隆起中

3問とも「地殻はマントルに浮いている」という1行から出てきます。標高という1つの数字の裏に数十kmぶんの厚みがある——そう思って地図を見ると、等高線の見え方が少し変わります。

GeoPrism JP では、標高・ジオイド高・楕円体高の関係を地図の上で動かしながら確かめられます。

https://apps.apple.com/app/id6780149823

高い山の下には「根」がある? — アイソスタシーで決まる地殻の厚さと、重力異常・ジオイドの読み方

本記事の根の厚さは、エアリーモデルに本文の密度を入れた計算例です。実際の地殻の厚さは地震波探査などから求められるもので、地域によって異なります。隆起の速さも地域差が大きく、本記事では向きだけを扱っています。


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