
この土地はもともと何だった? — 地理院地図の「地形分類」で旧河道・後背低地・盛土地を1クリックで読む
地理院地図で「地形分類」のレイヤを重ねて地図をクリックすると、その場所の土地の成り立ちと、地形から見た自然災害リスクが文章で出てきます。 「ここは昔の川の跡」「ここは水を埋めて陸にした土地」といったことが、専門の読図をしなくても分かります。2016年3月の公開から対象範囲は少しずつ広がっていて、直近では2026年9月1日に千葉県と山口県の平野部を中心に拡大しました。
地形分類とは何か
地形分類とは、地形を形態・成り立ち・性質などから分類したものです。その土地が山地か台地か低地か、同じ低地でも乾いた土地か低湿な土地か、自然の地形を人間がどう改変したか——そういう区分です。
もとになっているのは、国土地理院が昭和30年代から続けている土地条件調査です。その成果が「土地条件図」として図にまとめられ、さらにベクトルタイルという形式で地理院地図から配信されています。紙の図を読む技術が無くても、クリックで答えが返ってくるのはこのためです。
クリックすると何が出るか
「地形分類(自然地形)」「地形分類(人工地形)」の2つのレイヤがあり、クリックすると土地の成り立ちと地形から見た自然災害リスクの2つが文章で表示されます。自然地形のおもな区分を抜き出すと、こうなります。
| 地形分類 | 土地の成り立ち | 地形から見たリスク |
|---|---|---|
| 台地・段丘 | 周囲より階段状に高い平坦な土地。周囲が侵食されて取り残されてできる | 河川氾濫のリスクはほとんどない。地盤は良く揺れは小さい。液状化の傾向は弱い |
| 扇状地 | 山地の谷の出口から扇状に広がる緩い傾斜地 | 山地からの出水による浸水、谷口付近は土石流。地盤は比較的良い |
| 自然堤防 | 河川に沿って細長く、周囲より0.5〜数メートル高い土地 | 洪水に比較的強いが大規模洪水では浸水。縁辺部は液状化の傾向が強い |
| 砂州・砂丘 | 海岸・湖岸・河岸沿いの、砂礫質で周囲より高い土地 | 通常の洪水は免れることが多い。砂丘の縁辺部は液状化の傾向が非常に強い |
| 氾濫平野・海岸平野 | 起伏が小さく低くて平坦。洪水の堆積や、過去の海底が干上がってできる | 河川氾濫に注意。海岸に近いほど地盤が軟弱。沿岸部は高潮にも注意 |
| 後背低地・湿地 | 氾濫平野の中で周囲よりわずかに低い。泥が堆積してできる | 長期間浸水し水はけが悪い。地盤が軟弱で揺れが大きくなりやすい |
| 旧河道 | かつての河川の流路。流路移動で切り離され砂泥で埋まった | 長期間浸水。地盤が軟弱。埋立(盛土)した地域では液状化の傾向が非常に強い |
| 凹地・浅い谷 | 台地・扇状地・砂丘の中で、周辺よりわずかに低い土地 | 大雨で雨水が集まりやすい。周辺が砂州・砂丘だと液状化の傾向が強い |
「周囲よりわずかに低い」が繰り返し出てくるところが肝です。歩いていて気づかない数十cmの差が、浸水の長さと地盤の軟らかさを分けています。
人工地形のほうがもっと分かりにくい
もう1枚の「地形分類(人工地形)」には、人の手で作られた土地が入ります。
- 盛土地・埋立地 — 山地・台地・低地・水部に土を盛って造成した平坦地または傾斜地
- 切土地 — 山地や台地を切り取って作った平坦地または傾斜地
- 干拓地 — 水部を干して陸地化した土地
- 旧水部 — 湖沼・海・貯水池などを盛土・埋立・干拓で人工的に陸化したもの
- 農耕平坦化地 — 山地などを切り開いた農耕地
- 改変工事中の区域 — データ整備時点で改変が進行中だった区域
同じ造成地のなかでも、切土と盛土は性質が逆です。切ったほうは元の地盤が残り、盛ったほうは新しい土が載っています。現在の地表を見ただけでは、どちらなのか普通は分かりません。
液状化の「起こりやすさ」は地形で並ぶ
解説文に出てくる液状化の表現を強い順に並べると、地形と地盤の関係が見えてきます。
| 傾向 | 地形 |
|---|---|
| 非常に強い | 旧河道・落堀を埋立(盛土)した地域、砂丘の縁辺部 |
| 強い | 自然堤防の縁辺部、海岸平野、凹地・浅い谷(周辺が砂州・砂丘の場合) |
| やや強い | 氾濫平野、後背低地・湿地、砂州 |
| やや弱い | 扇状地の下流部、砂丘 |
| 弱い | 台地・段丘 |
上と下で、同じ市内でも揺れ方の前提が違うということです。国土地理院は自然災害と地形分類の関係を、液状化・地盤崩壊・土石流・洪水氾濫・高潮洪水ごとに整理した表も公開しています。
読むときの注意が3つ
1. ズームレベルで中身が変わる
「地形分類(自然地形)」はズームレベル14〜16が『詳細版』です。ズームレベル9〜13では、かわりに元データの範囲が表示されます。地理院地図では、いくつかの地形分類をまとめて表示していて、ベクトルタイルの中には細かい分類が属性コードとして入っています。拡大の度合いで表示が変わるのはタイル地図の性質なので、ズームすると地図の中身が変わるのはなぜ? と同じ話が、ここでも効いています。
2. 地域によって元のデータが違う
このレイヤは、5種類の資料を1つにまとめたものです。
- 土地条件図(数値地図25000(土地条件))
- 脆弱地形調査
- 治水地形分類図(更新版)
- 沿岸海域土地条件図
- 地形分類データ整備
元が違えば、分類の粒度や調査時期も違います。たとえば「山地斜面等」には、土地条件図側の火砕丘・溶岩円頂丘・火口・溶岩流地形と、治水地形分類図側の「山地」がまとめて入っています。細かく知りたいときは、ズームレベル9〜13で元データ名を確認してから、その資料の解説を読むのが正しい順番です。
3. 全国が揃っているわけではない
公開地域は順次拡大中で、まだ空白の地域があります。更新は2023年以降もほぼ毎年続いていて、2026年は7月1日(北海道や青森県などの平野部中心)と9月1日(千葉県と山口県の平野部中心)に広がりました。自分の土地が白いままなら、まだ整備が来ていないということです。
そして最も大事な注意として、地形分類が示すのは「その土地が本来持っている」自然災害リスクです。堤防・排水施設・地盤改良といった対策後の現在の危険度ではありません。実際の避難の判断には、自治体のハザードマップを併せて見る必要があります。地形分類は「なぜそこが危ないと言われるのか」の背景を教えてくれる地図、という位置づけです。
まとめ
- 地形分類は地形を形態・成り立ち・性質で区分したもの。昭和30年代から続く土地条件調査が土台で、2016年3月からベクトルタイルとして地理院地図で公開されている
- クリックで「土地の成り立ち」と「地形から見た自然災害リスク」が文章で出る
- 低地では数十cmの高低差が浸水の長さと地盤の軟らかさを分ける。自然堤防・砂丘は周囲より高く、旧河道・後背低地は周囲より低い
- 人工地形では切土と盛土が逆の性質を持つ。旧水部は水を陸にした土地
- 液状化の傾向は「旧河道の埋立地・砂丘縁辺部>自然堤防縁辺部・海岸平野>氾濫平野・後背低地>扇状地下流・砂丘>台地・段丘」の順に弱くなる
- ズームレベル14〜16が詳細版。地域ごとに元データが5種類あり、公開範囲は拡大中(2026年は7月1日・9月1日に拡大)
- 示されるのは本来のリスクで、対策後の現在の危険度ではない。ハザードマップと併せて読む
出典
- 国土地理院「ベクトルタイル『地形分類』— 身の回りの土地の成り立ちと自然災害リスクがワンクリックで分かります」(解説文一覧・更新情報・元データ) https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/lfc_index.html
- 国土地理院「土地条件図」(地形分類とは・主な地形分類項目・自然災害と地形分類との関係・更新情報) https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/lc_index.html
- 国土地理院「ベクトルタイル『地形分類』の凡例対応表」(土地条件図・治水地形分類図との対応と属性コード) https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/bousaichiri41017.html
本記事の公開範囲・更新日は2026年10月時点の記載に基づきます。範囲は随時拡大されるため、最新の状況は出典ページでご確認ください。
次に確認する
- ズームすると地図の中身が変わるのはなぜ? — 地形分類がズームレベル14〜16で詳細版に切り替わる理由を、タイル地図のしくみから追えます
- 等高線の間隔は何メートル? — 自然堤防や後背低地の「数十cmの差」が等高線に出ない理由が分かります
- 海抜と標高の違いとは — 低地の高さを語るときの基準面が整理できます
- 自然災害伝承碑とは?(GeoDiveExa) — 過去の災害が記録された場所の位置を、標高と重ねて実務的に扱う方法が分かります
- 【クイズ解説㉚】この土地はもともと何だった? をクイズで確認する — 自然堤防の高さ・液状化の順番・リスクの意味を3問で確かめられます
測地系ごとの座標のズレやジオイド高を地図の上で確かめる GeoPrism JP も公開しています。
開発者より: アプリ・Kindle本・公開プロジェクトの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。
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