地球一周は何キロ? — 赤道回りと子午線回りで67km違う理由と、「メートル」の出どころ

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地球一周は何キロ? — 赤道回りと子午線回りで67km違う理由と、「メートル」の出どころ

地球一周は何キロ? — 赤道回りと子午線回りで67km違う理由と、「メートル」の出どころ

約4万kmです。 ただし正確には一周の取り方で違います。赤道に沿って回ると約40,075km、北極と南極を通って回ると約40,008kmで、その差はおよそ67km。地球が少しつぶれた形をしているからです。そして「なぜ4万kmという半端な数にきれいに近いのか」には理由があります。メートルという単位が、地球の子午線の長さから作られたからです。

GeoPrism JP(GPRM)の「見て・学ぶ」の一環として、地球の形と長さの単位の関係を整理します。


1. 「一周」は1つではない

地球は完全な球ではなく、自転による遠心力で赤道方向にわずかにふくらんだ回転楕円体です。だから、どこを通って一周するかで長さが変わります。

いま日本の測量で使われている GRS80楕円体の定義値から計算すると、こうなります。

一周のしかた 長さ 概数
赤道に沿って(東西) 40,075,016.7 m 40,075 km
北極・南極を通って(南北・子午線) 40,007,862.9 m 40,008 km
約 67,154 m 67 km

もとになるGRS80の定義値は次の2つです。

  • 長半径(赤道半径) a = 6,378,137 m
  • 扁平率の逆数 1/f = 298.257222101

ここから短半径(極半径)b ≒ 6,356,752.3 m が決まります。赤道半径と極半径の差は約21.4km。地球儀サイズで言えば目で見て分からない程度のつぶれ具合ですが、一周すると67kmの差になって現れます。

楕円体と測地系の関係をまとめた図

補足:赤道回りは真円なので 2πa で一発ですが、子午線回りは楕円の周長なので単純な式では出ません。緯度によって曲がり方(曲率半径)が変わるため、積分して求めます。この計算の中身は子午線弧長はどう計算するか(GeoConverter Pro)にまとめてあります。


2. なぜ「4万km」に近いのか — 偶然ではない

ここが今回のいちばんおもしろいところです。

40,075kmも40,008kmも、4万kmに妙に近い。これは偶然ではありません。メートルという単位のほうを、地球に合わせて作ったからです。

1791年、フランスで長さの単位を決めるときに採用された定義がこれでした。

北極から赤道までの子午線の長さの、1,000万分の1を1メートルとする

つまり設計上、

  • 北極→赤道(子午線の4分の1)= 10,000,000 m ちょうど
  • 子午線一周=その4倍= 40,000,000 m = 40,000 km ちょうど

になるはずでした。「地球一周が約4万km」という覚えやすい数字は、地球がそういう大きさだったからではなく、4万kmになるように1mの長さを決めた結果です。

当時のフランスは、王の身体や地方ごとの慣習で長さの基準がバラバラだった状態を改め、「誰にとっても共通で、失われることのない基準」を探していました。そこで選ばれたのが、誰のものでもない地球そのものだったわけです。


3. でも、約2km足りなかった

理想的な話ですが、現実は少しずれました。

当時のフランスはダンケルクからバルセロナまでの子午線弧を実測し、その結果から地球全体の子午線長を推定して1mを決めました。しかし観測精度にも、地球の形のモデルにも限界がありました。

現在のGRS80楕円体で北極から赤道までを計算すると、こうなります。

長さ
当初の定義(設計値) 10,000,000.0 m
GRS80から計算した実際の値 10,001,965.7 m
約 1,966 m(およそ2km)

約2km長かったわけです。相対的には約0.02%のずれですから、18世紀末の測量としては驚くほど正確とも言えます。

では、この2kmを埋めるために1mを縮めたのか——しませんでした。すでにメートル原器が作られ、各国に配られ、実務で使われていたからです。単位のほうを直せば、世界中の測定値がすべて書き換えになります。

そこで1mはそのまま据え置き、「子午線の1,000万分の1」という由来のほうが定義から外れました。いま残っているのは「約4万km」という数字の名残だけです。


4. いまの1mは、地球と無関係に決まっている

メートルの定義はその後、二度大きく変わりました。

時期 定義の基準 特徴
1791年〜 地球の子午線の1,000万分の1 自然物が基準。ただし測り直すと値が動く
1889年〜 メートル原器(白金イリジウム合金の棒) 実物が基準。安定するが、原器が失われたら復元できない
1960年〜 クリプトン86の光の波長 どこでも再現できる基準へ
1983年〜 光が真空中を1/299,792,458秒で進む距離 現在の定義。光速を定義値として固定した

現在の1mは、地球の大きさとまったく関係がありません。光の速さと秒から決まります。秒のほうはセシウム原子の振動から定義されているので、地球上のどこでも、原理的には他の天体でも同じ1mが再現できます。

面白いのは順序が逆転したことです。

  • 昔:地球を測って、長さの単位を決めた
  • いま:長さの単位が先にあり、それで地球を測っている

だから今日では、地球一周が40,075kmだったり40,008kmだったりして半端でも、誰も困りません。単位のほうが地球から独立したからです。


5. 「地球の形」は1つに決まらなかった

もうひとつ知っておくと役に立つのが、地球を表す楕円体は歴史的に何種類もあったという話です。

地球は完全な楕円体ではなく、実際にはでこぼこしています。だから「自分の国の周辺にいちばん合う楕円体」を各国が選び、その置き方も国ごとに決めていました。日本がかつて使っていたベッセル楕円体もその一つです。これが測地系が国ごとに違っていた理由であり、旧日本測地系と世界測地系の座標が数百mずれる理由でもあります。

現在の世界測地系では、GRS80(および実用上ほぼ同じWGS84)という共通の楕円体を、地球の重心に合わせて置いています。ローカル最適をやめて、地球全体で1つにそろえたわけです。

旧日本測地系から世界測地系へのズレをヒートマップで表示

そして地球のでこぼこは、楕円体を決めたあとも残ります。それを扱うのがジオイドと標高の話です(→楕円体高・標高・ジオイド高の違いとは)。

GeoPrism JP の学ぶタブの画面


まとめ

  • 地球一周は、赤道回りで約40,075km、子午線回りで約40,008km。差はおよそ67km
  • 差が出るのは、地球が赤道方向にふくらんだ回転楕円体だから(GRS80:赤道半径6,378,137m、扁平率の逆数298.257222101、赤道半径と極半径の差は約21.4km)
  • 「約4万km」がきれいな数字なのは偶然ではなく、1791年に子午線の4分の1の1,000万分の1を1mと定めたから
  • しかし実測から求めた当時の値には誤差があり、いまの計算では子午線の4分の1は10,001,965.7m約2km長かった
  • 1mは直さず、定義のほうを地球から切り離した。1983年以降は光が真空中を1/299,792,458秒で進む距離
  • 地球のでこぼこゆえに楕円体は国ごとに違っていた。いまはGRS80で世界共通にそろえている

出典

  • 国土地理院「測量法施行令」に定める世界測地系(GRS80楕円体の要素) https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/datum-main.html
  • 国土地理院「世界測地系移行に関する質問集(Q&A)」 https://www.gsi.go.jp/LAW/G2000-g2000faq-2.htm
  • 国際度量衡局(BIPM)「SI基本単位・メートルの定義」 https://www.bipm.org/en/si-base-units/metre
  • 産業技術総合研究所 計量標準総合センター「長さの標準」 https://unit.aist.go.jp/nmij/

周長の数値は、GRS80楕円体の定義値(長半径 a = 6,378,137 m、扁平率の逆数 1/f = 298.257222101)から算出した計算値です。子午線弧長は数値積分により求めており、末尾の桁は計算方法によりわずかに異なる場合があります。実際の地表を歩いた距離ではなく、楕円体面上の長さです。


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