磁北はどう計算される — 地磁気モデルと偏角


磁北はどう計算される — 地磁気モデルと偏角

磁北はどう計算される — 地磁気モデルと偏角

⚠ 本記事は、以前の「3つの『北』を学ぶ」(真北・磁北・座標北の違いを整理した概念編)で「磁北は真北から西へ約4〜10度ずれる」と紹介した部分の深掘り版です。この偏角という数字が、実際には何によって決まり、どうやって求められているのかを掘り下げます。


地磁気の正体 — 地球の内部が作る磁場

方位磁針が北を指すのは、地球全体がひとつの巨大な磁石のようにふるまっているためです。地球中心部の外核(液体金属の層)の対流運動が電流を生み、それが地球規模の磁場を作り出しています(ダイナモ理論)。

この磁場の「北磁極」は、自転軸が指す地理学的な北極点とは一致しません。しかも北磁極は固定された点ではなく、年々少しずつ移動し続けています。方位磁針が指す磁北が、真北(地理極方向)から常にずれているのはこのためです。

偏角(磁気偏角)とは

真北と磁北のなす角度を偏角(磁気偏角)と呼びます。磁北が真北より西にずれる場合を「西偏」、東にずれる場合を「東偏」と呼びます。日本列島全体は西偏の地域にあたり、方位磁針は地図の真北よりやや西寄りを指します。

日本国内でも場所によって偏角は違う

偏角は全国一律ではなく、場所によって大きさが変わります。国土地理院の観測に基づく目安として、札幌付近では西へ約9度那覇付近では西へ約5度とされており、北ほど偏角が大きく、南西へ行くほど小さくなる傾向があります。東京付近ではその中間、おおむね西へ7〜8度程度が目安です。

登山用の2万5千分1地形図に「磁北線」が印刷されているのは、この地域ごとの偏角を反映してコンパスを正しく使うためです。

偏角はどうやって求めるのか — IGRFモデル

世界共通で使われている地磁気のモデルがIGRF(国際標準地球磁場、International Geomagnetic Reference Field)です。世界中の観測データをもとに数年おきに更新される数理モデルで、任意の地点・任意の時刻における磁場の向きと強さを計算できます。

最新版のIGRF-14は、係数が2024年11月に国際学術組織(IAGA)の作業部会で確定し、2025.0年時点のモデルと、2025.0〜2030.0年の5年間の変化を予測する成分が含まれています。IGRF自体は1900年から2030年までの期間をカバーしており、世界中の地磁気研究・アプリケーションで広く使われています。

国土地理院も独自の地磁気観測データをもとに、日本国内向けの地磁気値を提供しています。従来あった「地磁気値(予測値)を求める」というオンラインサービスは2024年12月に提供を終了しましたが、観測に基づく「地磁気値(2020.0年値)を求める」サービスは引き続き利用でき、任意の地点の偏角・伏角・全磁力を調べられます。

偏角は年々変化している

地磁気そのものが年々変化しているため、偏角の値も少しずつ動きます。国土地理院の地磁気図の更新によれば、全国平均でみると、直近5年間で西向きに約0.3度、直近50年間では約1.4度、偏角が変化してきたことが報告されています。数十年単位で見ると無視できない量の変化であり、地図や測量成果に記載された偏角の値には「いつ時点のものか」を確認する意識が必要です。

実務・現場での使いどころ

  • 登山・野外活動:地形図とコンパスを併用する際は、地形図に印刷された磁北線(またはその年の偏角)で補正する
  • 測量・現場作業:方位磁針だけに頼った作業は避け、GNSS測位や座標系に基づく方位角(真方位角・座標方位角)を基準にするのが原則
  • 古い資料の扱い:数十年前の資料に記載された偏角をそのまま今の現場で使うと、経年変化のぶんだけ誤差が生じうる

「北のズレ」をまとめて理解する

GeoPrism JPは測地系そのもののズレ(datum shift)を可視化するアプリですが、測量・地図の現場では、測地系のズレに加えて「真北・磁北・座標北」という3種類の北のズレも同時に意識する必要があります。前掲の「3つの北を学ぶ」で全体像を、方位角と子午線収差角(GeoConverterPro)で座標北側の数式を、それぞれ確認できます。
GeoDiveExaは測地系のズレに加えて真北変換までサポートしています。


まとめ

  • 磁北のずれ(偏角)は地球内部のダイナモ作用による地磁気の向きで決まり、真北とは常に一致しない
  • 日本国内でも偏角は場所によって異なり、札幌付近で西へ約9度、那覇付近で西へ約5度が目安
  • 世界共通のIGRFモデル(最新版IGRF-14は2025.0年時点、2030年までの予測を含む)で偏角を計算でき、国土地理院も国内向けの地磁気値を提供している
  • 偏角は年々変化しており、直近50年で全国平均約1.4度、西向きに変化してきた
  • 現場では地形図の磁北線や座標系ベースの方位角を基準にし、古い資料の偏角はそのまま使わない

関連記事

出典:
– 国際標準地球磁場 IGRF-14|京都大学 地磁気世界資料解析センター https://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/igrf/index-j.html
– 地磁気値(2020.0年値)を求める|国土地理院 https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/geomag/menu_04/index.html
– 国土地理院が最新の地磁気図を公開|山と溪谷オンライン https://www.yamakei-online.com/journal/detail.php?id=6574


開発者より: アプリ・Kindle本・オープンソースの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。


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