
【クイズ解説③】GNSSが出す高さは「標高」? — 楕円体高・標高・ジオイドのきほん
GeoPrism JP の「学ぶ・クイズ」から毎回2問ほどを取り上げて解説する連載、第3回です。第1回は地震のあとの座標補正(PatchJGD)、第2回は平面直角座標系を扱いました。今回のテーマは、平面位置に比べて取り違えやすい 「高さ」 です。「GNSSが出す高さは標高なのか」「ジオイドとは何か」という、初学者がつまずきやすい2点を取り上げます。
第1問:GNSSが直接出す高さは何か
RTKやスマホを含む GNSS 測位が「直接」出力する高さは、次のうちどれですか。
- 標高(海抜)
- 楕円体高
- ジオイド高
- 水深
正解:2(楕円体高)
GNSS が直接与えるのは、基準となる回転楕円体(GRS80)の面からの高さ=楕円体高です。一方、地図や工事で使う「海抜◯m」は、平均海面に近いジオイド面からの高さ=標高です。両者は別物で、関係は次のとおりです。
| 高さ | 基準面 | 何の高さか |
|---|---|---|
| 楕円体高 (h) | 回転楕円体の面 | GNSSが直接出す高さ |
| 標高 (H) | ジオイド面(平均海面に近い面) | 地図・工事の「海抜」 |
| ジオイド高 (N) | 楕円体面からジオイド面まで | 2つを結ぶ補正値 |
式にすると 標高 H ≒ 楕円体高 h − ジオイド高 N。日本周辺のジオイド高はおおむね30〜40m台で地域差があるため、楕円体高をそのまま標高と思い込むと、数十mオーダーで取り違えることになります。

GeoPrism JP のジオイドマップを動かすと、この「楕円体面とジオイド面のすき間(=ジオイド高)」が地域ごとにどう変わるかを目で確かめられます。
第2問:「ジオイド2024」の作り方の特徴は?
2025年4月の標高改定にあわせて提供された新しいジオイドモデル「ジオイド2024 日本とその周辺」の作り方の特徴として、正しいものはどれですか。
- GNSS衛星の軌道だけから計算した
- 重力データのみから構築した(重力ジオイド)
- 気温と気圧から推定した
- 衛星写真の色から推定した
正解:2(重力データのみから構築した)
ジオイド2024は、重力データだけから作られた 重力ジオイド です。従来の「ジオイド2011」は、重力データに加えて水準測量の結果を組み合わせた ハイブリッド型 でした。
| ジオイド2011 | ジオイド2024 | |
|---|---|---|
| 作り方 | 重力+水準(ハイブリッド) | 重力のみ |
| 含むもの | 水準の累積誤差・地殻変動が乗りうる | 重力にもとづく素直な形 |
長い距離をつなぐ水準測量は、遠くまで行くほど小さな誤差が積み重なりやすい性質があります。重力を主役にすることで、その積み上がりから切り離した面を描こう、というのがジオイド2024の考え方です。提供範囲は緯度15〜50度・経度120〜160度で、日本のEEZまでを含みます。

モデルの版が変わると、地域によってはジオイド高が数cm単位で変わることがあります。「どのジオイドで出した標高か」をそろえることが、実務での取り違え防止につながります。
ひとことメモ:平面が合っても高さは別
座標が設計図と平面でぴったり重なって見えても、高さの基準が違えば出来形確認・土量計算・点群の重ね合わせで食い違いが出ます。高さの数字を誰かに渡すときは、値だけでなく「これは標高(ジオイド2024)です」と基準をセットで伝えるのが安全です。
まとめ
GNSS が直接出すのは 楕円体高、地図で使うのは 標高、その差が ジオイド高 です。新しい ジオイド2024は重力データのみ で作った重力ジオイドで、ハイブリッドの2011とは作り方が違います。高さは平面位置以上に基準の取り違えが起きやすいので、「どの面からの高さか」を常に意識しましょう。
「学ぶ・クイズ」で覚えた高さの考え方は、GeoPrism JP のジオイドマップで地域に重ねて見ると一気に定着します。次回もクイズから2問を取り上げて解説します。
関連記事
- 【クイズ解説①】地震のあと、座標はどう直す? — PatchJGDと地殻変動補正(GeoPrism JP)
- 【クイズ解説②】平面直角座標系はなぜ複数ある?(GeoPrism JP)
- 楕円体高・標高・ジオイド高を見て学ぶ(GeoPrism JP)
- ジオイドマップの使い方(GeoPrism JP)
- 楕円体高から標高へ — ジオイド2024で変換する(GeoConverterPro)
- 夏のRTK-GNSS測位品質を守る — 現場での高さと誤差(GeoDiveExa)
出典
- ジオイド2024 日本とその周辺(試行版)説明書 | 国土地理院 https://www.gsi.go.jp/butsuri/data/manual_GSIGEO2024beta.pdf
- 全国の標高基準を表す「ジオイド2024日本とその周辺」 | geo-news.jp https://geo-news.jp/archives/6786
- 日本の測地系 | 国土地理院 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/datum-main.html
開発者より: アプリ・Kindle本・オープンソースの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。
お願い
本記事の情報は参考目的で掲載しており、正確性・完全性を保証するものではありません。誤記・不正確な情報がございましたら、コメント欄よりご指摘いただければ、確認のうえ修正いたします。
アプリを入手(App Store):GeoConverterPro(座標変換) | GeoPrism JP(測地系の可視化・学習)
コメントを残す