
GRS80とWGS84は同じ楕円体? — 似ているようで違う2つの基準楕円体を比べる
「日本の測地系はGRS80、GPSはWGS84」——測量やGNSSを学ぶと必ず出てくるこの2つの名前、ほとんど同じものとして扱われることが多いですが、厳密には異なる2つの準拠楕円体です。どれくらい違うのか、なぜ違うのか整理します。
そもそも準拠楕円体とは
地球は完全な球ではなく、赤道方向にわずかに膨らんだ回転楕円体に近い形をしています。測量やGNSSでは、この形を数式で近似した準拠楕円体を「ものさし」として位置を計算します。準拠楕円体は長半径(赤道半径)と扁平率(どれだけつぶれているか)の2つの数値で定義されます。

日本の測地系(JGD2000/JGD2011/JGD2024)が採用する準拠楕円体はGRS80。一方、GPSをはじめとする衛星測位システムが基準にするのはWGS84です。
数値で比べてみる
| GRS80 | WGS84 | |
|---|---|---|
| 制定機関 | 国際測地学協会(IUGG)1979年 | アメリカ国防総省(DoD)1984年 |
| 長半径 a | 6,378,137 m | 6,378,137 m(同一) |
| 扁平率 f | 1 / 298.257222101 | 1 / 298.257223563 |
| 短半径換算での差 | — | 約0.105mm |
長半径はぴったり同じ6,378,137mです。違うのは扁平率のごくわずかな端数だけで、地球の短半径(極半径)に換算しても約0.1mmという、実用上まったく問題にならない差です。
なぜ、こんなわずかな違いが生まれたのか
WGS84はもともとGRS80を土台に策定されましたが、扁平率を導く計算過程が異なります。GRS80の扁平率は、地球の力学的形状係数($J_2$、地球の重力分布の歪みを表す係数)から理論的に導かれています。WGS84を策定する際、この$J_2$の値を有効数字8桁で打ち切って計算に使ったため、扁平率にごくわずかな差が生じました。
つまり「別々に観測して求めた結果、違った」のではなく、同じ理論に基づきながら、数値の丸め方が違ったことによる差です。GRS80とWGS84がほぼ同一とみなされる理由も、逆に完全には一致しない理由も、ここにあります。
実務ではどう扱われているか
- 測量・地図の世界では、GRS80とWGS84は事実上同一のものとして扱われるのが一般的です。0.1mmの差は、cm級のRTK-GNSSでも測位誤差の中に埋もれます。
- 一方で、両者は制定機関も策定した年代も異なる、別々に定義された楕円体であるという事実は、測量士補試験などでも問われることがあります。「ほぼ同じ」と「完全に同じ」は違う、という理解が大切です。
- 実際に位置がズレる原因の大半は、楕円体の違いではなく測地系(座標系の原点や基準の取り方)の違いです。旧日本測地系(Tokyo Datum)と世界測地系(JGD系)のズレが数百mに達するのに対し、GRS80とWGS84の楕円体の違いはミリ以下——この桁違いのスケール感を押さえておくと、測地系の話が整理しやすくなります。
まとめ
- GRS80(日本の測地系が採用)とWGS84(GPSが採用)は、長半径が完全に一致し、扁平率だけがごくわずかに異なる準拠楕円体。
- 差は短半径換算で約0.105mm。原因は、WGS84策定時にGRS80由来の力学的形状係数$J_2$を8桁で打ち切ったこと。
- 実務上は同一視されるが、測量士補試験などでは「別々に定義された楕円体」という点が問われることがある。
- 楕円体の違い(ミリ以下)と、測地系のズレ(数百m級)はまったく別のスケールの話として区別する。
出典
- GRS80 | Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/GRS80
- 日本の測地系・準拠楕円体(GRS80) | 国土地理院 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/datum-main.html
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