【クイズ解説㉓】地球一周が「約4万km」ときれいな数字なのは偶然? — メートルの出どころのきほんを確認する

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【クイズ解説㉓】地球一周が「約4万km」ときれいな数字なのは偶然? — メートルの出どころのきほんを確認する

【クイズ解説㉓】地球一周が「約4万km」ときれいな数字なのは偶然? — メートルの出どころのきほんを確認する

偶然ではありません。

地球一周は約4万km。円周率や光速のように半端な数になってもよさそうなのに、なぜこんなにきりのいい数字なのでしょうか。答えは、地球のほうがきりよくできていたのではなく、1メートルの長さをそうなるように決めたからです。ただし話はそこで終わりません。決めたあとに「2km足りない」ことが分かり、しかも直さないまま今に至っています。


第1問:「地球一周=約4万km」がきれいな数字である理由は?

地球一周はおよそ40,000km。この数字がきりよく見えるのは、次のどれが理由でしょうか。

  1. 偶然。地球がたまたまその大きさだった
  2. 北極から赤道までの子午線の1,000万分の1を1メートルと定めたから
  3. 赤道一周の4,000万分の1を1メートルと定めたから
  4. メートル原器の長さを、あとから地球に合わせて調整したから

正解:2(北極から赤道までの子午線の1,000万分の1を1メートルと定めたから)

なぜそうなるのか

1791年、フランスが長さの単位を決めるときに採用したのがこの定義でした。

北極から赤道までの子午線の長さの、1,000万分の1を1メートルとする

すると設計上、

  • 北極 → 赤道(子午線の4分の1)= 10,000,000 m ちょうど
  • 子午線一周 = その4倍 = 40,000,000 m = 40,000 km ちょうど

になるはずでした。「地球一周が約4万km」は、地球がそういう大きさだったからではなく、4万kmになるように1mを決めた結果です。数字ときりのよさの因果が、直感とは逆向きになっています。

当時のフランスでは、王の身体や地方ごとの慣習で長さの基準がばらばらでした。「誰にとっても共通で、失われることのない基準」を探した結果、選ばれたのが誰のものでもない地球そのものだった、という経緯です。

選択肢3について

基準は赤道ではなく子午線(北極・南極を通る線)でした。 ここは引っかかりやすいところです。「一周」といえば赤道を思い浮かべますが、赤道一周を直接測るには海を越えなければなりません。北から南へ引いた子午線の一部なら、陸の上で実測できます。実際にフランスはダンケルクからバルセロナまでの子午線弧を測り、そこから地球全体の子午線長を推定しました。

選択肢4について

原器のほうを地球に合わせて直す、という調整は行われませんでした。理由は第2問につながります。


第2問:いまの1メートルは、地球の子午線から決まっている?

その後の精密な測量で、「北極から赤道まで」は10,000,000mちょうどではなく、約2km長いことが分かりました。では現在、1メートルはどう定義されているでしょうか。

  1. 地球の子午線の1,000万分の1。実測値に合わせて1mを約0.02%縮めた
  2. 地球の子午線の1,000万分の1。1mは変えず、子午線の測り方のほうを直した
  3. メートル原器の長さ。1889年に作られた白金イリジウム合金の棒が現在も基準
  4. 光が真空中を1/299,792,458秒で進む距離。地球とは無関係に決まっている

正解:4(光が真空中を1/299,792,458秒で進む距離)

なぜそうなるのか

GRS80楕円体で北極から赤道までを計算すると、こうなります。

長さ
当初の定義(設計値) 10,000,000.0 m
GRS80から計算した実際の値 10,001,965.7 m
約1,966 m(およそ2km)

約2km長かったわけです。相対的には約0.02%のずれですから、18世紀末の測量としてはむしろ驚くほど正確とも言えます。

では、この2kmを埋めるために1mを縮めたのか。しませんでした。すでにメートル原器が作られ、各国に配られ、実務で使われていたからです。単位のほうを直せば、世界中の測定値がすべて書き換えになります。

そこで1mはそのまま据え置き、「子午線の1,000万分の1」という由来のほうを定義から外しました。いま残っているのは「約4万km」という数字の名残だけです。

定義はその後、二度大きく変わりました。

時期 定義の基準 特徴
1791年〜 地球の子午線の1,000万分の1 自然物が基準。ただし測り直すと値が動く
1889年〜 メートル原器(白金イリジウム合金の棒) 実物が基準。安定するが、失われたら復元できない
1960年〜 クリプトン86の光の波長 どこでも再現できる基準へ
1983年〜 光が真空中を1/299,792,458秒で進む距離 現在の定義。光速を定義値として固定した

現在の1mは、地球の大きさとまったく関係がありません。光の速さと秒から決まります。秒のほうはセシウム原子の振動から定義されているので、地球上のどこでも、原理的には他の天体でも同じ1mが再現できます。

順序が逆転した

ここが面白いところだと思います。

  • 昔:地球を測って、長さの単位を決めた
  • いま:長さの単位が先にあり、それで地球を測っている

だから今日では、地球一周が40,075kmだったり40,008kmだったりして半端でも、誰も困りません。単位のほうが地球から独立したからです。

選択肢3について

メートル原器は1889年から1960年まで基準でしたが、現在は基準ではありません。「実物が基準」という方式には、原器が失われたら復元できないという弱点がありました。1960年以降の定義変更は、いずれも「どこでも再現できる基準へ」という同じ方向を向いています。


おまけ:そもそも「地球一周」は1つではない

第1問で子午線一周を扱いましたが、赤道一周と子午線一周は長さが違います。地球が自転による遠心力で赤道方向にふくらんだ回転楕円体だからです。

GRS80楕円体の定義値から計算すると、こうなります。

一周のしかた 長さ 概数
赤道に沿って(東西) 40,075,016.7 m 40,075 km
北極・南極を通って(子午線) 40,007,862.9 m 40,008 km
約 67,154 m 67 km

差は約67km。地球儀のサイズでは目で見て分からない程度のつぶれ具合ですが、一周ぶん積み上げるとこれだけになります。

もとになるGRS80の定義値は次の2つだけです。

  • 長半径(赤道半径) a = 6,378,137 m
  • 扁平率の逆数 1/f = 298.257222101

ここから短半径(極半径)b ≒ 6,356,752.3 m が決まります。赤道半径と極半径の差は約21.4kmです。

楕円体と測地系の関係をまとめた図

なお赤道一周は真円なので 2πa で一発ですが、子午線一周は楕円の周長なので単純な式では出ません。緯度によって曲がり方が変わるため、積分して求めます。フランスが子午線弧を実測してから全体を推定するのに苦労したのも、この非対称さが理由の一つです。

出典

  • 国土地理院「世界測地系」(GRS80楕円体の要素) https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/datum-main.html
  • 国際度量衡局(BIPM)「SI基本単位・メートルの定義」 https://www.bipm.org/en/si-base-units/metre
  • 産業技術総合研究所 計量標準総合センター「長さの標準」 https://unit.aist.go.jp/nmij/

周長・子午線弧長の数値は、GRS80楕円体の定義値から算出した計算値です(数値積分により算出。末尾の桁は計算方法によりわずかに異なる場合があります)。実際の地表を歩いた距離ではなく、楕円体面上の長さです。本記事の記述は2026年9月時点のものです。


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