
うるう秒とGNSS時刻 — UTCとGPS時刻の「18秒差」を学ぶ
GNSS測位は、衛星と受信機のあいだで「時刻」を極めて精密に合わせることで成り立っています。ところが、私たちが日常使う時刻(協定世界時・UTC)と、GPS衛星が使っている時刻(GPS時刻)は、実はぴったり同じではありません。この記事では、両者がなぜズレていて、その差が「18秒」で固定されている理由を学びます。
GPS時刻は「うるう秒を入れない」時計
GPS時刻は、1980年1月6日を起点に、原子時計をもとに一切の調整をせず連続してカウントし続ける時刻系です。地球の自転の揺らぎとは無関係に、淡々と秒を刻み続けます。
一方、私たちが日常使うUTC(協定世界時)は、原子時計をベースにしつつも、地球の自転速度に合わせてうるう秒という1秒単位の調整を不定期に挿入(まれに削除)してきました。地球の自転はわずかに減速・変動しているため、原子時計だけで時を刻み続けると、いずれ「時計の正午」と「太陽が真南に来る正午(天文学的な時刻・UT1)」がずれてしまいます。UTCはこのズレを一定の範囲に収めるための調整弁を持った時刻系、GPS時刻は調整弁を持たない時刻系、という違いです。
なぜ「18秒」で固定されているのか
うるう秒は1972年の導入以来、何度も挿入されてきましたが、直近の挿入は2016年12月31日でした。それ以降、2026年現在に至るまでうるう秒は追加されていません。GPS時刻はうるう秒を一切挿入しないため、うるう秒が追加されるたびにUTCとの差は1秒ずつ開いていき、直近の挿入以降はその差が18秒のまま固定されています。
| 時刻系 | うるう秒の扱い | 2026年時点の相互関係 |
|---|---|---|
| UTC(協定世界時) | 不定期に挿入・調整 | 基準 |
| GPS時刻 | 一切挿入しない(連続カウント) | UTCより18秒進んでいる |
GNSS受信機や測位アプリの内部では、衛星から送られる時刻情報(GPS時刻)を使って測位計算を行ったあと、表示用にこの「18秒」を含む補正情報(うるう秒情報は航法メッセージに含まれます)を使ってUTCへ変換しています。
「うるう秒廃止」報道の正確なところ
近年「うるう秒が廃止される」という報道を目にした方もいるかもしれませんが、正確には少しニュアンスが異なります。2022年11月の国際度量衡総会(CGPM)では、2035年までにUTCとUT1(地球の自転に基づく時刻)の許容差の上限を見直すという決議が採択されました。これは「うるう秒を即座になくす」というより、現在0.9秒とされている許容差をどこまで広げるかを、今後の会議で詰めていくという内容です。具体的な数値や適用開始年については、2026年の国際度量衡総会に向けて協議が続けられています。
いずれにせよ、GPS時刻がうるう秒の影響を受けない連続時刻系であるという性質そのものは変わりません。うるう秒の運用が見直されても、GNSS測位の内部計算に使われる時刻系の考え方は今後も同じです。
GNSS測位と時刻同期の関係
別の学習記事で扱ったとおり、GNSS測位は「衛星からの電波が届くまでの時間」を距離に変換する仕組みです。この計算が数cm〜数mの精度で成立するのは、衛星と受信機の時計が精密に同期しているという前提があってこそです。うるう秒のようなUTC側の調整は、この衛星測位の内部計算そのものには影響しませんが、測位結果を人間が読む時刻表示に変換する段階で必ず関わってくる、縁の下の仕組みだと言えます。

まとめ
- GPS時刻はうるう秒を挿入しない連続カウント式の時刻系、UTCは地球の自転に合わせてうるう秒で調整する時刻系。
- 直近のうるう秒挿入は2016年12月31日で、以降GPS時刻とUTCの差は18秒のまま固定されている。
- 2022年のCGPM決議は「うるう秒の即時廃止」ではなく、2035年までにUTC-UT1許容差の見直しを検討するというもので、詳細は2026年のCGPMで協議される。
- うるう秒の運用が見直されても、GNSS測位内部の時刻系の考え方自体は変わらない。
出典
- うるう秒は2035年までに廃止へ | Data Center Café https://cafe-dc.com/network/leap-second-set-to-be-killed-off-before-2035/
- 暦Wiki/時刻/うるう秒がなくなる? | 国立天文台暦計算室 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/BBFEB9EF2FA4A6A4EBA4A6C9C3A4ACA4CAA4AFA4CAA4EBA1A9.html
- 暦Wiki/GPS | 国立天文台暦計算室 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/GPS.html
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なお、RTK-GNSSが搬送波位相を使って高精度化する仕組み(整数値バイアス)については、GeoDiveExaブログで別途取り上げる予定です。
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