地球の大きさは誰がどうやって測った? — 井戸の影と2都市の距離だけで出した数字と、いまの値との差

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地球の大きさは誰がどうやって測った? — 井戸の影と2都市の距離だけで出した数字と、いまの値との差

地球の大きさは誰がどうやって測った? — 井戸の影と2都市の距離だけで出した数字と、いまの値との差

最初にやったのは、紀元前3世紀のエラトステネスです。 使ったのは「2つの街で同じ日の同じ時刻に影の角度を比べる」ことと、「その2つの街の距離」だけ。角度の差が円の50分の1だったので、距離を50倍すれば一周になる——それだけの理屈で、いまの値と数%以内の数字にたどり着いています。測り方の骨格は、現代の測地測量とまったく同じです。


1. 影の角度の差=緯度の差

エラトステネスが使った観察は2つです。

  • エジプト南部のシエネ(現在のアスワン)では、夏至の正午に太陽がほぼ真上に来る。深い井戸の底まで日が届き、垂直な棒に影ができない
  • 同じ日の同じ時刻、北のアレクサンドリアでは、垂直な棒に影ができる。その傾きは円周の50分の1(=7.2度)

太陽光が平行に届いていると考えれば、この7.2度は2都市の緯度の差そのものです。地面が平らなら、同じ時刻の影の角度は同じになるはずで、差が出ることが「丸い」証拠になります。

緯度1度が何メートルに当たるかを桁ごとに示した図

あとは比の計算です。

分かっていること 値
2都市の緯度差 円周の 1/50(7.2度)
2都市の南北距離 5,000スタディア(当時の距離単位)
したがって全周は 5,000 × 50 = 250,000スタディア

「角度の差」と「その間の距離」が分かれば全体が出る。これは現代の測地測量でも変わらない考え方です。緯度差1度が何メートルに当たるかという話は緯度・経度「1度」は何メートル?にまとめています。


2. 「250,000スタディア」は何キロか — ここが確定していない

困ったことに、1スタディアが何メートルだったのかが確定していません。有力な説が複数あり、どれを採るかで答えが変わります。

1スタディアの説 全周の計算値 いまの子午線一周(約40,008km)との差
157.5 m(エジプト系の説) 約 39,375 km 約 1.6% 小さい
157.5 m・全周252,000スタディア説 約 39,690 km 約 0.8% 小さい
185 m(アッティカ系の説) 約 46,250 km 約 15.6% 大きい

つまり「誤差1%台の驚異的な精度だった」とも「15%ずれていた」とも言えてしまいます。よく見かける「誤差わずか数%」という紹介は、157.5m説を採ったときの数字です。

ただし、157.5m説を支持する状況証拠はあります。5,000スタディアを157.5mで換算すると約787.5 km。アレクサンドリアとアスワンの緯度差は約7.1度で、緯度1度あたり約111kmとすれば南北距離は約788 km。ほぼ一致します。当時の距離の把握そのものが、かなり良かったということです。

注意:この一致は「エラトステネスが正確だった証明」ではなく、「157.5mという換算がもっともらしい」という手がかりです。史料の解釈には幅があり、断定はできません。


3. 何が優れていたのか — 数字ではなく「方法」

エラトステネスの方法は、次の3つの部品でできています。

  1. 角度を測る(天体の見え方から緯度差を出す)
  2. 距離を測る(2点間の実距離)
  3. 比で全体に広げる(部分から全周へ)

この3点セットは、18世紀の子午線弧長測量にも、明治の日本の三角測量にも、いまの人工衛星による測地にも、そのまま引き継がれています。変わったのは各部品の精度だけです。

時代 角度の測り方 距離の測り方 到達した精度の桁
紀元前3世紀 影の長さ 街道の歩測・行程 数%(換算の解釈次第)
18世紀 天文観測+三角測量 基線1本を実測し、あとは角度で延ばす 千分の一の桁
20世紀後半〜 電波・レーザーで衛星や天体を直接測る 光の速さ×時間 mm〜cmの桁

三角測量が「距離を1本だけ測って角度で広げる」方法だったこと、そしてそれがGNSSでどう変わったかは三角測量とはに詳しく書いています。日本でこれを歩いてやった人の話は伊能忠敬の測量にあります。


4. いまの「地球の大きさ」

現在は、地球を回転楕円体として1つの数値の組で表します。測量法で定められた世界測地系ではGRS80楕円体を使います。

項目 値
長半径 a 6,378,137 m
扁平率の逆数 1/f 298.257222101
赤道に沿った一周 約 40,075 km
子午線に沿った一周 約 40,008 km

「一周」が2つあるのは、地球が南北につぶれているからです。その差はおよそ67km。詳しくは地球一周は何キロ?にまとめました。

エラトステネスが測ったのは子午線回りのほうです。もし当時「赤道回り」を測っていたら、67km分だけ大きな答えになっていたことになります。当時の精度では区別できない差ですが、どちらを測ったのかを意識すること自体が、測地学の出発点でもあります。


5. 自分で追いかけてみる

この方法は、いまでも手元で再現できます。

  1. 南北に離れた2地点の緯度を調べる(地図アプリでよい)
  2. 緯度の差を出す
  3. 2地点の南北距離を調べる
  4. 距離 ÷(緯度差 ÷ 360)= 全周

たとえば緯度差7.2度で787.5kmなら、787.5 ÷ (7.2 ÷ 360) = 39,375km。エラトステネスと同じ答えになります。緯度の差を距離に直せるようになると、地球のスケール感が一気に手元に来ます。


GeoPrism JP で見る

GeoPrism JP の「学ぶ」には、測地系がどう決められ、どう更新されてきたかを順に追える目次があります。エラトステネスから現代のGRS80までの流れの、日本側の続きにあたる部分です。

GeoPrism JP の「学ぶ」タブの目次画面

  • GeoPrism JP: https://apps.apple.com/app/id6780149823

まとめ

  • 地球の大きさを最初に測ったのはエラトステネス。影の角度の差(=緯度差)と2都市の距離だけで全周を出した
  • 出した数字は250,000スタディア。スタディアの長さに諸説あるため、誤差は1%台とも15%台とも言える
  • 評価すべきは数字より方法。「角度+距離+比」という骨格は、現代の測地測量まで変わっていない
  • いまは回転楕円体(GRS80)の数値で表し、赤道回り約40,075km・子午線回り約40,008km

出典

  • 国土地理院「測量の基準」(世界測地系・GRS80楕円体の要素) https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/datum-main.html
  • 国土地理院「世界測地系移行に関する質問集(Q&A)」 https://www.gsi.go.jp/LAW/G2000-g2000faq-2.htm
  • エラトステネス | Wikipedia(日本語) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%A9%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%8D%E3%82%B9
  • 国際度量衡局(BIPM)「メートルの定義」 https://www.bipm.org/en/si-base-units/metre

※スタディアの換算値と、エラトステネスが用いた都市間距離の解釈については研究上の幅があります。本記事は代表的な説を並記する形にとどめています。


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